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  • 特集・国土交通省20年目の挑戦(3)

    【一般社団法人全国建設業協会会長 奥村太加典/着実に国土基盤の整備が進展】

     

     国土交通省が発足20周年を迎えられましたことを、心よりお慶び申し上げます。

     

     2001年1月、北海道開発庁、国土庁、運輸省、建設省の旧4省庁を母体とした国土交通省の発足以来、国土開発、社会資本整備、交通政策などが、統合のメリットを生かして総合的に展開されたことで、高規格道路のミッシングリンク解消や河川・海岸の整備、整備新幹線の延長など、わが国の国土基盤の整備は着実に進展しました。

     

     また、国土交通省発足の翌月に、入札の公平性や透明性を確保する入札契約適正化法が、05年には、公共工事の品質確保を図る品確法が施行され、さらに、14年、19年と、担い手の確保・育成や働き方改革に向け、2度にわたり品確法、建設業法、入札契約適正化法のいわゆる「担い手3法」の改正が行われるなど、この20年間で建設業を取り巻く情勢の変化に応じた様々な法令の整備が進みました。

     

     近年、自然災害が激甚化・頻発化するなか、人々が安全に安心して暮らせる持続可能な社会を創るためには、また、昨年初頭から続くコロナ禍から日本経済を再生するためには、社会資本整備の計画的かつ安定的な推進と、その担い手である地域建設業の持続的な発展が不可欠です。国土交通省におかれましては、これらの諸課題に向けて、引き続き、各種政策を展開していただくことを期待しております。

     

     私ども全建は、47都道府県建設業協会、並びに全国約1万9000社の会員企業と一体となり、これからも「地域の守り手」としての社会的使命を果たすとともに、ポスト・コロナの新しい時代においては、「新しい地域の創り手」としての役割も全力で務めてまいりますので、今後ともより一層のご指導とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

     

    【持続可能なインフラメンテナンスサイクルの実現/予防保全への転換不可欠/サイバー空間上に国土を再現】

     

     いま、高度経済成長期以降に整備された国内の社会インフラの維持管理・更新が大きな課題となっている。2033年には、道路橋の約63%、トンネルの約42%が、建設後50年以上となるなど、加速度的に老朽化が進んでいる。一方、市町村の土木部門の職員数は、05年度から18年度の間で約14%減少するなど、対応する要員が少なくなっている。東京一極集中や人口減少、少子高齢化により、今後さらに職員数が減少する傾向にあるため、人員確保対策も急を要している。

     

     インフラメンテナンスは、「予防保全」への転換や新技術の導入などによって、今後増加が見込まれる維持管理・更新費を縮減できる重要な施策である。国土交通省所管のインフラを対象にした将来の維持管理・更新費は、「事後保全」の場合に48年度の年間費用が18年度の約2.4倍に拡大すると試算されている。一方、「予防保全」では、48年度に「事後保全」と比べて約5割減少し、30年間の累計でも約3割減少できるので財源的なメリットは大きい。

     

     道路施設、河川管理施設などの点検結果によって、対策が必要なインフラが多数存在していることも明らかになっていることから、早急に予防保全へシフトすることが求められている。

     

     技術者の減少や維持管理・更新費の増加などに対応するため、新技術を活用した維持管理・更新の高度化・効率化を進めることも重要である。すでに、風速20m程度の強風下でも飛行可能な全天候型のドローンや、3次元データを出力できる陸上・水中ドローンによる測量・調査の高度化も進んでいる。

     

     こうした状況を踏まえて、国交省では、測量・調査から設計、施工、維持管理まで建設生産プロセス全体で得られたデータを集約・共有し、地方公共団体のデータとも連携のうえ、サイバー空間上に国土を再現する「インフラデータプラットフォーム」の構築を進めている。また、交通や気象などのデータと連携することで、災害時の避難シミュレーションや最適なヒートアイランド対策など、行政サービスの高度化、新しい産業やサービスの創出も実現していく方針。

     

     地方公共団体の技術職員が減少する中で老朽化した大量のインフラを維持管理するには、地方公共団体間の連携や、国から地方公共団体への支援が不可欠である。道路、河川の維持管理の包括的民間委託や、都道府県と市区町村の業務を共同発注することで、契約の合理化や地方公共団体間の連携強化に取り組む。国交省でも地方公共団体からの要請に基づき技術者を派遣するなど、人的支援を展開していく。

     

     インフラメンテナンスに社会全体で取り組むことが必要との認識から、16年には、産学官民の技術や知恵を総動員するためのプラットフォームとして、「インフラメンテナンス国民会議」を立ち上げた。その中で、インフラの維持管理における分野横断的な連携や、多様な主体との連携などを推進し、産学官民の技術や知識を総動員するプラットフォームを形成している。

     

     このほか、住民がインフラの日常点検に参加する地域活動などを促進する。持続的に適切な維持管理・更新を進めるため、費用負担のあり方も含めた議論も深めているところである。

     

    4932-1インフラデータプラットフォームのイメージ(資料:国土交通省)

     

    【「新・担い手3法」成立/適正工期を確保】

     

     建設業の働き方改革、生産性向上、災害時の緊急対応強化などを目的に、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入契法)及び「建設業法」を改正した「新・担い手3法」が、2019年6月に成立した。この中で、強く打ち出したのが工期についての規定だ。近年、長時間労働が社会的な問題として注目され、建設業でも工期の適正化の確保が急務。改正建設業法では注文者(発注者・元請け)に対して、著しく短い工期による請負契約の締結を禁止する規定を新設した。成立から2年近くが過ぎ、各種規定が実行段階に移っている。

     

     国土交通省では、新・担い手3法の本格運用を受けて、市町村をはじめとするすべての公共工事の発注者に対して、「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」(公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議申合せ)などを踏まえ具体的に取り組むよう強く求めている。

     

    【新建築士制度スタート】

     

     受験要件である実務経験を、建築士としての免許登録までに満たすべき要件に置き換えることで、若手を中心とした受験者の確保を後押しすることを狙った新しい枠組みの建築士制度が2020年にスタートした。

     

    4932-2受験資格緩和により受験の間口も広がった(日建学院上野会場)

     

     従来、1級建築士の免許を取得しようとする場合、2年以上の実務経験がないと試験を受けることができなかった。また、大学卒業後、すぐ受験できない点や就業後2年以上の実務経験を満たしたとしても、多忙な業務を抱え、勉強時間や対策を十分に取れないなどといった理由で、受験を諦めてしまうといった問題が指摘されていた。

     

     新たな枠組みは、受験要件となっていた2年以上の実務経験を、免許の登録要件に改めることで、大学を卒業後、いつでも受験できるようにした。これにより、試験に合格した場合、試験の前後に関わらず、合計で2年以上の建築実務経験があれば、1級建築士として登録することができるようになった。

     

     受験のタイミングではなく、建築士名簿への登録のタイミングで、一定の実務経験を求める形に変更することで、資格のレベルを維持しながら、より積極的に受験できる環境が整った。少子化と超高齢化が同時進行する中、減少傾向にある若手を中心とした受験者の確保を図るとともに、その延長線上に資格者の高齢化という現状を打破するための枠組みが普及しつつある。

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    掲載日: 2021年3月31日 | presented by 建設通信新聞

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