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  • 建設論評・ローマ帝国に学ぶ

     「ローマは1日にして成らず」。よくご存知のフレーズであろう。数百年かけてローマ帝国の領土拡大とともに、道路や上水道ネットワークなど巨大なインフラが整備され、いまでもポン・デュ・ガール(フランス)やハドリアヌス水道(チュニジア)など数多くのコンクリート遺跡が残っている。

     

     どうして、これだけ大規模なインフラ整備が可能であったのか。経済力が必要なことはもちろんだが、技術面において、コンクリートの活用が可能となったことが大きい。

     

     ローマ時代の建築の代表作であるパンテオンは、コンクリート建造物の傑作と言われている。また、ローマ市内の上水道整備も1㎞当たり34cmの傾斜という高い精度で、350㎞もの整備にコンクリートやれんがが多用されている。当時のコンクリート強度はジオポリマー技術によって、いまの倍以上の強度があったそうだ。

     

     しかし、ローマ時代に盛んに用いられたコンクリート技術、ローマ時代以降ばったり使われなくなった。なぜなら、セメントをつくるためには1000度強を超える高熱で石灰岩を焼成する必要があるからだ。当然、石油や石炭は活用されていないので、それだけ大量のエネルギー、つまりは燃料としての木材が大量に必要であった。

     

     さらに、テルマエ(共同浴場)好きのローマ人、ローマ市内だけで900カ所もあったそうで、そのためローマ周辺では木がなくなり、このエネルギー大量消費を維持するために領土を拡大し、スペインの山を削り、北アフリカの森にまで燃料となる木を求めたそうだ。

     

     ローマ時代のインフラを定期的に点検したり、補修したりする仕事を担う役割としての「造営官」と呼ばれる人たちもいた。しかし、上水道や風呂、セメントづくりのエネルギーとなる木材が減少すると、これらのインフラも維持管理をすることが難しくなってしまった。ローマの「水」の消費量は現在の横浜市とほぼ同じ量で、それらをわずか3分の1の人口で消費していた。いわば、現代人の3倍もの水を消費していたわけだ。セメントなどの材料不足により上水道などのインフラが維持できず、テルマエを閉鎖したり、銀の鋳造品質が落ち貨幣価値を下げたりするなど、ローマ帝国が衰退した要因の1つは、建設されたインフラを維持するためのエネルギー供給が圧倒的に不足したことにあった。

     

     ローマ時代の衰退とともにコンクリート技術が途絶えたのは、このエネルギー大量消費の反動でもあった。次のコンクリート技術登場のためには、産業革命による石炭・石油という新たなエネルギー利用を獲得する18世紀まで待つ必要があった。

     

     現代は新たな化石燃料により、再度、ローマ時代同様、大量にエネルギー消費を行っている時代だ。石油も枯渇すると言われて久しいが、それでもいつか来るエネルギー供給不足の日に備えて、早々に対応すべき時期に来ているのではないか。建設面でも新たな技術の導入によるエネルギー消費を抑える技術の開発やインフラを維持するための簡便な技術の開発などを改めて目指すべきだ。ローマ時代の教訓を生かすためにも。

     

    (司)

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    掲載日: 2018年3月30日 | presented by 建設通信新聞

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