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  • 建設リサイクル・上/都市機能更新で解体工事が増加/問われる業界の存在意義

     高度経済成長期に造られ老朽化が懸念される公共インフラや旧耐震基準で建てられた建築物などをどう更新するかが課題になっている。市街地を多く抱える都市部では解体工事が周辺に与える影響の軽減に加え、コンクリート塊など工事に伴い発生する建設副産物の再資源化などが急務。東京都内での建設リサイクルを巡る現状や課題を取材した。(編集部・蔵持功)

     

     「解体工事業者にとって都市機能の更新事業は、今後の存在意義を示す試金石になるはずだ」。東京建物解体協会の高橋仁副会長(全国解体工事業団体連合会副会長)は業界の認識をこう話す。

     

     解体工事の現場で施工者がまず直面する課題に、それまで隠れていて見えなかったものがあらわになる、という事態がある。その一つが古い建築物で断熱材、吹き付け材などとして用いられたアスベスト(石綿)だ。

     

     吸引すると重大な健康障害を引き起こす石綿は現在、使用禁止が徹底されている。だが、高橋副会長は「解体工事現場の事前調査が不十分なケースが見受けられる」と警鐘を鳴らす。

     

     建設リサイクル法に基づき都や区市が17年度に3回実施した一斉パトロールでは、石綿に関わる指導を行った件数が5月分で78件(15年度53件、16年度117件)、10月分が78件(79件、87件)、1月分で38件(67件、83件)に上った。石綿を含む建築材料の事前調査結果の掲示を怠っていたことが、指導の主な理由だったという。

     

     大気汚染防止法と都環境確保条例では、解体工事着手前に石綿の事前調査を行うことが施工者の義務。石綿が見つかった場合、発注者は作業の届け出を自治体に行い、施工者は調査結果を工事現場に掲示する義務もある。

     

     都環境局環境改善部大気保全課によると、施工者への指導は比較的小規模な工事に集中し、年間の指導件数に明確な減少傾向は現れていない。調査結果を掲示しなかった理由は「掲示の失念」との回答が多いという。

     

     事前調査で石綿が見つかった場合、現場では飛散防止対策を講じなければならない。作業レベルは発生が推定される粉じん量などに応じて内容が設定される。

     

     ただ、一斉パトロールの機会だけで事前調査が適切に実施されたかどうかを詳細に確認するのは難しい。阿部貞弘大気保全課長は「現状では、重大な違反が隠れていないと断言することはできない」と話す。

     

     石綿による建設労働者の健康被害は、国や企業の責任を認める裁判所の判決が相次いでいる。環境省によると、石綿は1970~90年に年間30万トン程度輸入され、8割以上が建材に用いられたとされる。建物の寿命を50年と仮定すれば、石綿を含む建物の解体は2020年以降ピークを迎えることになる。

     

     「指導件数が減らない今の状況がいいとは捉えていない」と阿部課長。高橋副会長は「事前調査に不備がある場合、着工を認めない措置も検討すべきではないか」と行政の対応強化を訴える。

     

     石綿の有無に関わらず利用者のいない空き家や老朽化した建物を除却する緊急性も高まっている。こうした建物は資金や権利関係などでそれぞれ事情があり、解体も改修もできないままになっているケースが多い。

     

     首都直下地震がいつ起きてもおかしくない状況下で、同協会は「解体工事業には地域の『減災』を担う役割もある。そのことを世間にも周知していきたい」としている。

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    掲載日: 2018年4月16日 | presented by 日刊建設工業新聞

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