当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 建設論評・ロボットスーツの示唆

     「働きやすい職場から働きたい職場へ」を目指した環境整備が、建設業の現場でも本格化しだした。物流施設や住宅建設のトップメーカー・大和ハウス工業は4月初旬、2015年から実証実験を続けてきたロボットスーツ「HAL(ハル)」の「腰タイプ作業支援用」を、全国工場に30台導入すると発表した。これまで3年間をかけて取り組んできたロボットスーツの改善にめどをつけたことになる。

     

     建設技能者の人手不足はいまさらながら言うに及ばないが、3K(危険、きつい、汚い)職場と揶揄(やゆ)される現場で業務上疾病発生は避けなければならない。厚生労働省の「業務上疾病発生状況等調査」によると、建設業の疾病では全体の第1位を占めるのが「腰痛」の31.4%。第2位は「腰痛」を除いた「負傷に起因する疾病」の21.4%なのだから、建設業の現場でも「腰痛」はまさに職業病になりつつある。そうした腰痛労災リスクを低減し、新3K(給料良し・休日確保・希望あり)職場に向けての最初のステップが労務作業の軽量化でもある。当然ながら、生産年齢人口の減少により、女性、高齢者の現場進出も進んでいく。こうしたダイバーシティーによる体力格差を埋めるにもロボットスーツは一定の役割を果たすことになる。

     

     大和ハウスのロボットスーツ導入は、15年に職方の作業負荷低減、安全・安心の職場環境づくりを実証するため、施工現場10台、岡山工場2台で始まった。実証実験は、2年目にあたる16年、ロボットスーツの開発を進めるサイバーダイン社と連携して、商品への改善策や有効性の高い現場への絞り込みと装着感の改善などに取り組み、17年に再び建設現場、工場内で検証するといった地道な作業が行われている。そうした結果として今回の工場への本格導入となったのだ。工場では、主に部材の集積やピッキング、梁の加工作業などを手掛ける際に装着される。コンパクトな軽量モデル(約3㎞)のため、装着したまま長時間作業(動作時間約180分)が可能で、腰への負荷が最大約4割低減できるという。充電に90分ほどかかる難はあるものの、月額の賃料は8万-10万円程度とリーズナブルである。建設技能者としては、筋力に自信のなかった層にも就労の機会が増えることになる。生産性向上の一歩は、人材・人手の確保にあるのは間違いない。

     

     日本経済の成長にとって最大の難題は、人口減少だと指摘する声は少なくない。それは、無制限な移民政策を支持する声につながるが、欧米の状況を見れば見るほど、せいぜい技能労働者の確保が精いっぱいの取り組みになる。であれば、生産年齢寿命を先延ばしし、現場で働き手として活躍してもらうことが現実的ではないのだろうか。ことし2月に閣議決定した「高齢社会対策大綱」で最も納得したのは、「高齢者」の定義や区分が定かではなくなったという点だった。 (能)

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2018年4月19日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事