建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
建設百年企業・酒井重工業/国産初のロードローラ開発
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【つくる道 つなぐ世界/海外事業をさらに深耕、拡大/酒井 一郎社長/得意分野磨き、世界屈指の人材育てる】
土木事業の規模拡大に伴い、国産初のロードローラを開発して以来100年の節目を迎えた酒井重工業。酒井一郎社長は「多くの方に助けてもらった。そのご縁と感謝の気持ちをいつまでも忘れてはいけない」と心境を語る。道路建設機械市場の約70%のシェアをもつパイオニアとして、道路の建設・維持・補修事業の高度化に向けてたゆみない製品開発と基礎技術研究を続けてきた同社は、次なる100年に向けて“グローバルニッチメーカー”としてさらなる躍進を目指す。 創業者・酒井金之助が、輸入自動車と輸入機関車の整備・修理を目的に創業したのは1918年のこと。27年には機関車の製造を開始したが、国内の土木事業の規模拡大に伴い、道路転圧用ロードローラの製造を開始。需要の増大に応えて設備を拡充、飛躍的発展を遂げた。35年にはタイへロードローラの輸出を始めたものの、第二次世界大戦中は陸軍と海軍の管理工場に指定され、45年の東京大空襲で本社と工場の大半が焼失。一時休眠状態に陥った。
創業者の死去もあった中、46年には2代目となる酒井智好前社長が工場再建に着手。事業組織を法人に改め、酒井工作所を設立した。機関車とロードローラを扱う2本柱で事業を拡大するも、森林鉄道の撤退と道路網の整備が急拡大したことに伴い、機関車の製造を中止し、道路建設機械専業に事業をシフトした。酒井重工業に商号を変更したのもこのころだ。
以降、まさに日本の高度成長期とともに成長し、タイを皮切りに世界100カ国以上に輸出し、ロードローラの国内シェアは70%と、日本を代表する道路建設機械のトップメーカーとしての地位を確固たるものにした。64年に東証二部上場、81年には東証一部上場を果たし、90年代前半まではバブル経済により「絶好調」の事業環境が続く。まさに順風満帆だった。
だが、次第にバブル経済崩壊や公共投資削減という時代の荒波を受け、国内需要は半分まで落ち込むことになる。3代目に就任したばかりの酒井一郎社長は当時33歳だったが、かつて三井物産に勤務した経験もあり、会社の生き残りを賭けてロードローラ事業のグローバル化へとかじを切った。「本当に辛い時期だったが、思い返せばここでの自己変革がいまの会社を支える力になった」。インドネシア、アメリカ、中国にそれぞれ製造拠点を設けたことも奏功し、2006年3月期以降は海外売上比率が5割を超えるグローバル企業へと成長した。これに伴い、250億円前後で推移していた連結売上高は、18年3月期には285億円を見込み、念願の300億円近くまで拡大した。
酒井一郎社長の持論は「得意分野をもっと強くする」ことだ。次なる100年に向け、企業としての強みの磨き込みに余念がない。今後は道路建設機械全般に特化した“グローバルニッチメーカー”として、「海外事業のさらなる深耕と拡大」を掲げる。
より一層の成長の土台を築くべく「300億円規模の事業体制へと会社をバージョンアップする」必要性を感じている。東南アジア市場で半分の需要があるインドネシアを戦略拠点と位置付け、生産能力を拡大する戦略はその一環となる。「インドネシアでは、現地の人がロードローラをSAKAIと呼ぶほどブランド力が浸透している」からこそ、社員も集めやすいという利点がある。現地需要だけでなく、同国を拠点とした他国への輸出にも注力する。
加えて、自動運転技術、電気自動車技術の急速な進歩に伴う産業競争軸の転換など、世界のマクロ情勢は大きく変化しつつある。だからこそ「品質だけで勝負するのではなく、第4次産業革命に伴う次世代製品、サービスによる新たな付加価値ビジネスを創造するため、積極的な投資を行う」と力を込める。足元ではICTを活用した情報化施工、排ガス規制や省エネ対応など、施工現場の最前線で活躍できる製品群を提供するべく、多様な企業との共同研究も進めている。
道路建設機械という専門分野を追求していくには、その分野で「世界屈指の人材を育てる」ことが鍵になる。社員には「世界のトップになどすぐになれる」とはっぱをかける。今春は12人の新入社員を迎え入れた。ネパール、スリランカ、ロシアと多国籍の人材が集うが、「背中を見せる仕事に言葉の壁はない」ときっぱり。ただ、設計から営業に至るまで、あらゆる人材が集まるメーカーだからこそ、「横断的なコミュニケーションが大切になる」との思いを口にする。女性活躍の面では、日本道路建設業協会の「なでしこエンジニアの会」にも社員が参加しており、その躍進にエールを送る。
さらに高度化、多様化し、環境への配慮も求められる今後の道づくり。100年の経験から生まれた有形無形のノウハウと、新技術への飽くなき挑戦を通じて、世界の国土開発への貢献はこれからも続く。
残り50%掲載日: 2018年5月7日 | presented by 建設通信新聞