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  • 国交省・九州技術事務所/土木にVR導入/災害現場で有効性確認/ゲームエンジン リアルに再現

     国土交通省九州地方整備局九州技術事務所は、土木建設分野におけるVR(仮想現実)の導入に向けた研究を進めている。既に実用段階を迎えており、4月11日に大分県で発生した耶馬溪町山崩れ現場では、現場状況の把握や情報共有で役立てた。研究や普及の拠点となる研究室を5月末にも同事務所内に設置し、活躍の場を広げていく方針だ。 VR技術は、360度カメラで撮影記録した全方位の映像と音声などを、装着したヘッドマウントディスプレー(HMD)を使って視聴し、その場にいるようなリアルな体験を可能とする。ゲームやアトラクションなどでの活用は知られているが、それを土木建設分野に応用させるというものだ。国交省の新技術基本計画の策定を受けて、同事務所が2017年から研究を進めてきた。

     

     耶馬溪町の山崩れ現場では、現地で撮影した動画を同事務所に送り、災害対策機器輸送の可否から、設置位置の検討、機器の運用状況の把握などで活用した。指揮した島本卓三所長は「図面だけでは分からないことが多く、これまでの静止画ではどうしても撮り忘れがあり効率的でなかった。VRにより正確性が増し、首長ら現地に行けない人の理解の助けにもなる」と有効性を確認した。

     

     映像は、災害の理解促進を図るため、アーカイブし蓄積していくことも検討している。

     

     また、筑後川河川敷では2㎞程度を対象に、CIMデータを活用した仮想空間を創出した。HMDを通して、仮想空間を自由に歩き回り、視点は地上からのアイレベルはもちろん、上空からや構造物内の不可視部分を行き来できる。時間や天候も自由に設定可能だ。ゲームエンジンで構築したのが特徴で、雨滴までリアルに再現されている。

     

     これを使えば災害演習などへの応用が可能だ。雨を降らし浸水部分を確認できるほか、仮想空間内の構造物をわざと壊しその影響などをケーススタディーできる。設計ミスの発見や維持管理などでの応用も効き、CIMデータの新たな活用方法としても期待される。

     

     開発を担当する同事務所の房前和朋技術情報管理官によると、土木建設分野においてゲームエンジンの応用やVR技術の活用はほかに例がなく、実用化されれば「世界で初めてではないか」としている。ただ、仮想空間の移動の際の乗り物酔いや、HMDの視野の狭さ、大容量の動画データの通信の遅さなどの課題を抱えており、これらの克服が今後の研究テーマとなる。

     

     島本所長は「建設産業の生産性向上に役立てたい。技術は全国に発信したい」とし、研究室では見学を受け付け、実際にVRを体験できるようにする計画だ。

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    掲載日: 2018年5月18日 | presented by 建設通信新聞

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