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建設論評/五月病抑止は管理職の役割
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>ことしの新入社員タイプは、産労総合研究所によると「SNS(交流サイト)を駆使するチームパシュート」(型)だそうだ。平昌冬季五輪で日本女子が金メダルを獲得したスピードスケートのパシュート(追跡・追撃)競技のように、少数の仲間同士でSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用し、綿密な情報交換で協力関係を築き、追い風の就職活動で内定というゴールをスピーディーに獲得してきた経緯が重なり名付けられたようだ。
彼らを迎え入れる建設産業界の主要160社の入社式トップ訓示要旨が4月本紙に掲載された。自社の社会的役割と実績、培ってきた独自の文化・風土を語るとともに、「挑戦・失敗」「活力・熱情」「変化・対応」「順守」「期待」などのキーワードが多く目に入った。
これらキーワードの伝え方が、この時期話題になる「五月病」因子の1つに挙げられると考える。理由は2つある。1つは、共通言語をもつ仲間とのコミュニケーションは得意だが、自身の立ち位置は分かりつつも距離を感じる話し手とのそれが不得手な彼らは、内容の消化が不十分になりがちなこと。2つ目は、彼らの理解力を軽視した話し方と話題にある。意気込んで職に就き2度目の給料を手にする彼らの現在の境地に影響を与えているようだ。
「五月病」--新人や人事異動でストレスを抱えやすい人がこの時期に患う精神的疾患(うつ状態)を指すと言われる。病名は「適応障害」で、5月や6月だけでなく環境変化に伴い年中発症するとされる。その因子は新しい環境になじめない、人間関係がうまくいかない、自身の新しい目標が見つからない、イメージと現実のギャップに悩むなどが挙げられている。その背景は、“成長とやりがい”“仕事に意味と価値”を求める彼らが、就く業務がどのような形で会社に、ひいては社会に貢献するのかに加え、与えられる目標達成に向けて取り組む業務が、自身の成長にどのように役立つかの説明の希薄さが原因で悩みを抱えているからだろう。
時間制限のあるトップ話は、企業価値向上を目指して自社の将来を担う優秀な新人に期待を込める主にマクロ的内容のはずだ。教え示すメッセージを、言葉を選びキーワード化するが、理解度を深める、例えば、どのようなことが「挑戦」か、なにが「失敗」なのかなど、彼らが成長の糧になる普遍性を認識できる事例を用いた具体的な話も大事にしたい。
一説に、言葉は気持ちを伝えるツールだが、書面のないスピーチや説明などは24時間以内にほぼ忘れると言われ、伝わるのは話し手の姿勢だけだとも。部下の考えが上司の期待どおりであることは稀(まれ)である。人は意識しないと95%の確率で昨日と同じ考えとなる。記憶は「目に8割、耳に2割」と、メモによる記憶の定着性は高い。致し方ないと諦めるのではなく、貴重なトップの時間を通過儀礼にしないためにも、訓話内容を彼らが業務で発揮できるアドバイスや自社の周辺諸施策への認知を高める役割を管理職クラスが担っていると考える。新人の成長度合いが管理職の評価になると言われる所以(ゆえん)でもある。 (次)
残り50%掲載日: 2018年5月23日 | presented by 建設通信新聞