建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
建設論評・インスタ映え建築
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>昨年の流行語大賞にもなった「インスタ映え」の人気はいまだ衰えを見せず、多くの人たちが情報発信ツールとして活用している。これは気紛(きまぐ)れな流行ではなく、情報ツールとして社会に定着しつつあると言える。そしてさまざまな情報の中に建築物や街並みが取り上げられているのは興味深い。
建築界や建築家が専門的な視点で見る評価とは違った角度から、建築の価値が見直されているのかもしれない。誰かに見せたいスポットやインテリア、そして背景として美しい建築や街並みが今後も紹介され続けるのだろう。それは建築の価値のほんの一部に過ぎないかもしれないけれど、情報の波に乗って大きく膨らみ注目を集める可能性を秘めている。
個人の情報発信ツールは今後もますます充実していくに違いない。そしてあふれる情報は社会の価値観として収斂(しゅうれん)していくこともあれば、カオスのように無秩序に飛び交うだけのこともある。ただそこには間違いなく流行の行方や社会の変化の兆し、あるいは変わりゆくニーズの断片が含まれている。
玉石混交の中から価値ある情報をいかに抽出するかは、情報化社会の課題であり、その能力が今後の競争力を高める大きな武器になるに違いない。専門的な技術や知識の向上を図るとともに、さまざまな情報に目を光らせ続けることが求められる。
さらに発せられる情報の真偽はまったくわからない。精緻な加工により本物と見紛(みまが)う偽物があれば、あり得ないと思うような本物の写真もある。あまりにも容易に情報発信ができる環境が整っていながら、個人が発信する情報に責任が伴わない現実がある。
それはある意味でバーチャルの世界である。奥行きのない薄っぺらな世界で自己表現し感動し、笑い、悲しんでいる。それは新しいおもちゃを与えられた子どもが、まだその使い方や楽しみ方を十分理解しないまま、ひたすら 弄(もてあそ) ぶ ことに熱中しているのに似ている気がしてならない。たとえそうだとしても子どもたちがやがて成長し、そのおもちゃを巧みに使いこなすようになれるかは未知数である。なぜなら前例のない出来事が進んでいるからである。
一方、建築は紛れもなく現実の世界に存在する。インスタグラムの世界に登場する建築や街並みは、その美しさや特徴でもてはやされたとしても、リアルではない。その建築に関わり生活をする人たちにこそリアルな存在であり、その本質的な価値こそが大切である。とはいえ建築に対する新たな評価尺度が加わりつつあるというのも、また事実である。
ここは世の中の変化を肯定的にとらえていくほうが得策かもしれない。社会が建築や街並みに対して、どのような形であれ興味を示してくれることは良いことである。リアルな世界で本当に価値あるものを創出し、それがバーチャルの世界でも人々を幸せにできるなら、それはやはり素晴らしい出来事なのである。 (泰)
残り50%掲載日: 2018年5月24日 | presented by 建設通信新聞