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  • 南海トラフ長期損失1240兆円/インフラ対策の必要性強調/土木学会 巨大災害の経済被害を初推計

     土木学会(大石久和会長)は7日、南海トラフ地震や首都直下地震など、「国難」をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書を公表した。巨大地震・津波などがもたらす長期的な経済損失を過去の大災害を実証的に踏まえながら推計。発生から20年間で南海トラフ地震が1240兆円、首都直下地震は731兆円の経済被害が生じるほか、国、地方合わせて南海トラフで131兆円、首都直下では77兆円の税収が減少するとした。こうした致命的な事態は、道路や港湾、堤防など公共インフラ対策を着実に実施することで回避でき、南海トラフでは経済被害を4割軽減できることを明示。巨大災害発生時までに各対策が「間に合う」ためにも15年以内で完了する必要があると強調している。=2面に表掲載 報告書は、2017年度会長特別委員会として設置したレジリエンス確保に関する技術検討委員会(中村英夫委員長)がまとめた。首都直下地震、南海トラフ地震と、東京、大阪、伊勢の三大湾における巨大高潮、東京荒川、大阪淀川、名古屋庄内川等の三大都市での巨大洪水を対象検討として被害を推計。それを減じるために必要な対策とその経済効果を示し、対策の早期実施を求めている。

     

     被害想定のうち、資産被害は内閣府の推計データを援用。これまで考慮されなかった人口や生産施設の流出など長期的に継続する経済損失について、リカバリーカーブ(回復曲線)という概念を用いて考察し、GDP(国内総生産)の毀損(きそん)値を推計した。「地震・津波」は20年間で回復すると推計された阪神・淡路大震災のケースを基本に、「洪水」「高潮」は14カ月で回復すると推計された鬼怒川の堤防決壊によるケースを基本として、それぞれの期間における毀損値を累計している。

     

     一方、対策と効果については、「政府によるハード対策」を中心に検討。道路、河川、海岸・港湾インフラの整備・増強に限定して対策の効果を推定しており、災害被害の水準、対策効果ともに実際起こりうる「下限値」として示した形となっている。

     

     このうち、南海トラフ地震では道路整備や海岸堤防対策、建築物と港湾・漁港の耐震強化(公共支出38兆円以上)を行うことで、経済被害を41%、金額で509兆円縮減でき、54兆円の税収増となる効果が見込まれ、人的被害でも4割以上縮小できることが示されている。

     

     首都直下地震も同様の公共インフラ対策(同10兆円以上)で34%、247兆円の被害軽減となり、税収も26兆円増加。巨大高潮は海岸堤防対策に合計で1兆3000億円を投じることで最大6割の被害軽減効果があり、合計で6兆8000億円の税収増につながる。巨大洪水は河川インフラ整備に計9兆円を投入することで荒川や淀川は被害そのものを抑えることができるとしている。

     

     これらのことから巨大災害に対する公共インフラ対策は経済被害を縮減し、税収の低迷を緩和することで「財政構造の健全性を守る」ためにも不可欠であると指摘。さらなる被害軽減を図る上で東京一極集中緩和策の展開や、コンビナート対策など、より防災機能を重視した インフラ整備の必要性にも言及している。

     

     7日に会見した大石会長は「これだけの大きな経済被害が出るという推計に正直驚いている。このままでは経済大国どころか世界の最貧国に転落する恐れすらある」と警鐘を鳴らした上で「対策を遂行するためにはレジリエンス5カ年計画といったような法的にも裏付けられた中期的なインフラ整備計画が政府によって樹立される必要がある」との考えを示した。

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    掲載日: 2018年6月8日 | presented by 建設通信新聞

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