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  • 経営軸線・ゼネコンの道筋 上/売上2兆円時代に突入/受注と生産の歯車かみ合う

     好業績を維持する大手ゼネコン。その利益水準はバブル期をも上回る。主戦場の国内建設マーケットで安定した受注を続け、着実な手持ち工事の積み上げにより、連結売上高2兆円を射程に置く。大手各社はどのような成長の道筋を描いているか。ゼネコン経営のいまを追った。 2018年3月期連結決算は大手・準大手クラス26社中、6割に当たる16社が最高益を確保した。大手では鹿島と大成建設が営業利益・経常利益・純利益、大林組は営業利益・経常利益が最高額。減収となった清水建設も営業利益と経常利益で1200億円を超えた。竹中工務店も直近17年12月期に3期連続の最高益更新を達成した。

     

     工事入手時の受注時採算ラインはこれまでよりも高水準にあり、現場はある程度の利益を見越した運営ができている。しかも受注プロジェクトは大型化し、採算効率も良い。手持ち工事量は大成建設の約2兆3000億円を筆頭に、残る3社も1兆7000億-8000億円規模をキープする。現在は施工体制を維持することを前提に、念入りな計画受注を続けている状態だ。受注と生産の歯車はうまくかみ合っている。

     

     好業績を維持する上場大手は、連結売上高2兆円を経営目標として掲げる流れが鮮明になっている。18年3月期から5カ年の中期経営計画が進行中の大林組は最終22年3月期に2兆円を到達点に置く。19年3月期から3カ年計画をスタートした鹿島は最終21年3月期に2兆1500億円を設定、早くも初年度の19年3月期には2兆円に乗せる計画だ。

     

     19年3月期から3カ年計画の大成建設は最終21年3月期に1兆8700億円に引き上げ、中長期には事業規模2兆円を目標付ける。中期経営計画を毎年ローリングする清水建設は具体の数値目標を開示していないものの、将来の目指すべき売上高は同業他社と同水準にあることは言うまでもない。

     

     18年3月期の単体受注高が前期を上回った大手・準大手クラスは大成建設と清水建設を含む10社。現在は施工体制を見ながらの受注となり、中には大型案件の受注を一時的に控える状況もあり、結果的に前期実績を下回っても想定の範囲内というゼネコンが大半を占める。東京五輪開催の20年度までは「一定の需要が見込める」というのは大手各社の共通認識だ。

     

     とはいえ、いずれ取り巻く受注環境は大きく変化する可能性がある。21年度以降に成長の道筋をどう描けるか。高齢化・人口減少時代が色濃くなり、国内建設投資の先細りが懸念される中で、受注競争の激化も懸念される。経営の目線は既に“ポスト五輪”に向けられている。

     

     鹿島は建設投資の変化に加え、新たな社会・顧客ニーズの変化に伴う要求水準の高度化や多様化など事業環境の変化を「非連続な経営環境」と称し、そこを軸に置いた戦略図を描く。まさに中計ではコアコンピタンスを揺るがす事態に備え、収益の多様化を推し進める。海外や周辺ビジネスの拡大を図りながら、上流から下流までの事業一貫体制を確立する新たなビジネスモデルがそこにある。

     

     大林組も中計の目指すべき将来像として、ゼネコンの枠にとらわれることなく成長する道筋を軸に置き、建築、土木、開発、新領域の既存4本柱を強化しながら、事業領域の深化・拡大、グローバル化を加速させる。大成建設も将来的に厳しい淘汰(とうた)の時代が再来するリスクを想定しながら、成長する道筋を描いている。具体的にはエネルギー・環境や都市開発・PPPに加え、インフラ更新を含めたリニューアル、ライフサイエンス分野を軸にエンジニアリングの対応も図る。

     

     清水建設は国内建設事業に次いで、社会・顧客に新たな価値を提供する事業の構築に乗り出す。建設、投資開発、エンジニアリング、LCV(ライフサイクルバリュエーション)、本社部門が一体となったグローバル事業の推進やグループ連携によるストックマネジメント事業の推進、サステナビリティ分野の事業化推進などに取り組む。

     

     重点ターゲットに対するアプローチの仕方は各社それぞれだが、本業の建設事業に次ぐ新たな収益の柱の構築を目指す部分は同じだ。中長期に2兆5000億円程度の連結売り上げを目指す鹿島の場合、その際に1000億円以上の純利益を目標に置く。達成時には純利益の半分を海外、開発事業、周辺事業など国内建設事業以外で賄うことを前提にしているのだ。

     

     安定した新しい収益源が確保できれば、本業の建設事業にも良い影響を及ぼす。鹿島は国内建設工事の利益水準が想定を上回れば、中長期目標の純利益1000億円を現行中期経営計画の最終21年3月期にも達成できる可能性を示唆しているように、大手にとっての成長の足がかりとなるのは国内建設事業から得られる本業収益であることは言うまでもない。

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    掲載日: 2018年6月11日 | presented by 建設通信新聞

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