建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
Topics・都市コンパクト化へメリハリを/超高層の50年と今後
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>霞が関ビルが完成して50年、超高層ビル(高さ100m)は、都市の景観を大きく変貌させた。50年間で超高層ビルは都市をどう変えたのか、そして今後50年を見通したときどうあるべきなのか。高崎経済大学の大澤昭彦准教授は、メリハリのある立地を強調する。【高崎経済大学准教授/大澤 昭彦氏/将来見据え戦略的に高層化】
超高層ビルは、この50年間、急カーブで普及した。とくに都市再生の時代に急増する。たとえば東京で高さ60m以上の建物の7割は2000年以降に建設された。霞が関ビルを超える超高層ビルは、国内で約240棟(高さ150m以上)、高さ100m以上のビルは、東京都内だけで約430棟を数える。
超高層ビルがもたらしたメリットとして、大澤准教授が特筆するのは、「公開空地が創出されたこと」だ。霞が関ビルが計画された当時、東京は都市の過密化が大きな問題となっていた。超高層化することで、オープンスペースを生み出し、都市の改造・再生につながった点をあげる。霞が関ビルでは、高層化することによって、約1万㎡もの緑の広場(空地率約72%)を創出した。
大澤准教授によると、都内で総合設計制度を活用したビルが生み出した公開空地は約197haで、日比谷公園12個分に相当する。
「しかも、初期の公開空地は人のいない寂しい広場が多かったが、近年の再開発では居心地のよい魅力的な広場が増えつつある」。アトリウムや屋上庭園などの公開空地だ。
一方、超高層ビルがもたらした問題としては、景観や市街地環境への影響を指摘する。
景観面では、シンボルとなる歴史的建造物への眺望景観が損われた。
タワーマンションの問題も指摘する。居住の都心回帰に寄与したものの、高層マンションの供給にインフラが追いつかない問題を露呈した。
では、超高層は今後、どんな可能性や課題があるのか。大澤准教授は、「持続可能な都市を考えるうえで、超高層ビルをどう位置づけるか」だと指摘する。
この点を考える時、キーワードになるのが都市のコンパクト化という。「コンパクト化するには、建物の超高層化は有用な方法だ」と超高層の可能性に言及する一方で、「コンパクト化を図るには、高層化を進めるところと抑えるところのメリハリが必要だが、現在、それがない」と課題もあげる。
超高層ビルの高齢化にどう対応するかも課題だ。築30年以上の超高層ビル(高さ150m以上)は現在の17棟から20年後には152棟、高さ60m超を東京都だけでみても現在の156棟から20年後には872棟へと急増する。長寿命化と解体(建て替え)が大きなテーマとなる。
さらに人口減少の問題もある。15年の1億2709万人から65年には8808万人。今後、わが国の人口は減少していくことは確実だ。
「そんな中で、わたしたちは数多くの超高層ビルを支えることができるのか。負の遺産になる恐れはないのか」
大澤准教授は、超高層ビルを否定しているのではないが、現在の容積緩和を前提とした超高層化には疑問を呈する。短期的な経済性の追求にとらわれ過ぎていないか、長期的な視点を踏まえてつくられているのか、将来の都市の姿をどのように描いているのか、といった点だ。その場その場の土地活用の最大化を図っているだけではとの思いがある。
象徴的だと指摘するのが容積率で、「経済政策として容積率の規制緩和が進んでいるが、その結果でき上がるビルのボリュームがあまりにも大きすぎる」。たとえば、霞が関ビルと東京ミッドタウン日比谷を比べると階数がほぼ同じだが、容積は約2倍にもなる。
「無秩序な超高層ビル開発ではなく、将来の都市の姿を見据えながら戦略的な高層化を図る必要がある。コンパクト化を図るには、高層化を進めるところと抑えるところのメリハリが必要だ」
残り50%掲載日: 2018年6月12日 | presented by 建設通信新聞