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話題縦横/2018年版土地白書/都心の地価上昇、所有者不明が増加
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【価値は2極化、所有のあり方模索】
土地に対する日本国民の考え方が、転換点にさしかかっている。景気の回復を背景に全国の地価が上昇に転じ、都心を中心にオフィスや宿泊施設などの需要が拡大傾向にある。一方で、「土地所有に価値を感じない」という考え方も浮き彫りになってきた。今通常国会では、相続などで土地の所有者を把握できなくなった「所有者不明土地」問題に対応するための特別措置法が6日に成立。本格的な人口減少社会を迎えるに当たり、国の根幹となる土地所有のあり方が模索されている。 国土交通省の2018年1月1日時点の公示地価は前年に比べて住宅地が10年ぶりに上昇に転じ、商業地が3年連続で上昇した。住宅地は全国的に雇用・所得環境の改善が続く中、低金利の継続による需要の下支え効果もあり、利便性の高い地域を中心に地価の回復が進んでいると分析する。
17年の新築のマンションは首都圏で平均5000万円台後半、1㎡当たりの単価が80万円台の高水準となっている。近畿圏の平均価格はやや下落傾向がみられるが、1㎡の単価は前年に比べて上昇傾向にある。
商業地は、再開発の進展による活性化や外国人観光客を始めとする国内外からの来街者の増加を背景に、主要都市の中心部などで店舗やホテルなどの進出意欲が旺盛だった。オフィスビルも空室率はおおむね低下傾向が続き、一部地域で賃料の改善が見られるなど、商業地としての収益性の高まりが確認されている。
企業の土地取引の動向も活発化している。国交省の土地取引動向調査結果によると、企業の本社所在地における土地取引の状況は08年のリーマン・ショック以前の水準まで回復。ことし2月の調査結果では特に大阪府内の上昇が大きく、東京23区内を上回る水準となった。
オフィス市場は増員に伴う拡張や立地改善を背景に、東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)では空室率の改善傾向が続いており、17年10-12月期の空室率は08年上期以来となる3.1%となった。平均募集賃料は空室率ほどの改善はしていないが、14年1-3月期に上昇に転じて以降、上昇を継続している。
オフィスビル以外で、需要の伸びが大きいのが宿泊施設とサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。宿泊施設は近年の訪日外国人旅行者数の増加に伴う需要が大幅に拡大。ここ2年で着工床面積は約3倍に増加した。高齢化の進展に伴いサ高住の需要も堅調だ。11年12月の登録状況が112棟3448戸だったのに対し、17年12月は6827棟22万5374戸にまで増加している。
■8割が土地放棄認めるべき
他方、国交省の土地問題に関する国民の意識調査(17年度)では、「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産か」という質問に対して「そう思う」と回答した人の割合は93年度の半数以下の30.2%にまで減少した。逆に「そう思わない」は4割超まで増加した。
国交省は土地について国民意識の希薄化と所有者不明土地問題が密接に関係すると考え、「利用されていない土地に関するWEBアンケート」を実施した。空き地所有者の約半数が所有に負担感を感じ、3分の1が管理していないことが分かった。土地所有者に対する責務を問う設問では、空き地所有者以外も含めた全体で84.9%が管理の義務を負っていると答えた。一方で土地所有権については、76.6%が放棄を認めても良いと回答。そのうちの6割が一定の費用を支払えば認めても良いとしている。手放す場合の費用負担は、費用がかかるなら手放したいとは思わないとの回答が約半数を占めた。1年分の固定資産税相当額で手放したいという回答も28.2%あった。
こうした状況を踏まえ、政府は今月1日に所有者不明土地問題の対応を検討する関係閣僚会議を開き、対策推進に関する基本方針を決定した。所有権を放棄する制度創設や相続登記の義務化を検討する。今後、所有者不明土地の発生抑制や解消に向け、関係省庁が連携して検討を進め、20年までに関連法案の国会提出を目指す。
残り50%掲載日: 2018年6月14日 | presented by 建設通信新聞