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  • 経営軸線・ゼネコンの道筋 下/本業支える新たな収益の柱/成長投資の拡充相次ぐ

     将来への布石として、大手ゼネコンが成長投資を拡充している。中期経営計画の公表数字を抜粋すれば、2018年3月期から5カ年計画の大林組は期間中に4000億円、19年3月期から3カ年計画の大成建設は3000億円、同じく3カ年計画の鹿島は5000億円を計上する。いずれも本業の建設事業を深化させるとともに、新たな収益の柱を形づくることが狙いにある。 これまでも成長投資を絶やさなかった大手各社だが、国内建設マーケットの安定期を足がかりに、投資枠を一気に拡充した。年平均で800億円を投じる大林組の場合、前中計時よりも年200億円を増額した格好。5年間で総額4000億円を充てる計画で「建設技術の研究開発」「不動産賃貸事業」「再生可能エネルギー事業など」にそれぞれ1000億円、「工事機械・事業用施設」「M&A(企業の合併・買収)ほか」にそれぞれ500億円を配分する。

     

     3年間で5000億円を投じる鹿島の場合、「国内開発事業」に1600億円、「海外開発事業」に2400億円、「研究・開発」と「M&A・人材開発・その他」にそれぞれ500億円を投じる。海外では北米に1100億円、アジアに1000億円、欧州に250億円、大洋州に50億円を計画しており、売却による回収としても1750億円を見込む。

     

     3カ年で3000億円を投じる大成建設は20年以降も持続的に成長できる事業基盤の構築に向け、建設や周辺事業の高付加価値化とともに、収益機会の拡大も図る。「技術開発投資」と「働き方改革と生産性向上への投資」にそれぞれ600億円、「人材投資・基盤整備など」に300億円を充て、さらに海外事業と注力分野のエネルギー・環境、都市開発・PPP、リニューアル、エンジニアリングに総額1500億円を投じる。

     

     各社には重み付けの違いはあるにしろ、海外、不動産開発、再生可能エネルギーという機軸を打ち出し、それらを新たな収益の柱に育てようと動いている。例えば大林組では10年後にPPP、再生可能エネルギー、新事業領域を合わせた売上高規模を18年3月期水準の倍以上に引き上げるとともに、不動産関連事業では営業利益を5年後に5割増まで引き上げる目標を掲げている。

     

     先頭を切って走り出した再生可能エネルギー事業では太陽光発電で129メガワットを達成、ことし8月には山梨県大月市で木質バイオマス発電が運用を開始する。期待をかける風力発電事業についても陸上発電として秋田県三種町で発電量6メガワットの発電所に続き、青森でも発電の準備が進行中。洋上風力では能代港と秋田港の2エリア以外に、秋田県沖では一般海域での事業化も地元調整が進む。

     

     18年3月期に海外売上高が4300億円となった鹿島は、19年3月期に売上げ規模を5200億円まで引き上げ、20年3月期以降はさらなる上昇カーブを描く。海外事業の拡大に対応するため、海外リスク機能を強化しながら、国内建設事業中心の軸足を見直し、グループ経営をより強める経営体制にシフトする。

     

     このように大手各社は横断的な事業推進体制の構築に乗り出そうとしている。将来の備えとして、いかなる事態にも持続的な成長ができるように、収益の多様化に向け突き進んでいる。その深化へのスピードを高めるため、各社は一気にギアを1段階上げている。潤沢で質の高い手持ち工事の蓄えがあるうちに、その基盤を整えたいからだ。

     

     一方で社会的使命として社を挙げて取り組み始めた働き方改革の動きも活発になり、事業環境が安定しているうちに定着させるため、実現に向けた力強い一歩を踏み出そうとしている。建設産業の魅力向上が将来の担い手確保につながる近道となるだけに、トップダウンで現場の働き方改革に突き進んでいる。

     

     業界を挙げて目指す現場の4週8休(週休2日)だが、特に民間工事では工期延長につながるだけに実現への課題は山積している。従来よりも休みが増えることで、現場を支える技能者の賃金が減ってしまう懸念もある。大林組のように東京本店管轄で4週6閉所を前提とした工期設定の受注提案をスタートすることに合わせ、協力会社の負担が増えないように建築工事の労務単価を平均で15%引き上げる動きも出てきた。清水建設は技能労働者への賃金補てんを開始し、所定の閉所条件を満たした現場の1次協力会社の月々の出来高に一定割合を加算することで、閉所日の増加による技能労働者の収入減少を抑える。

     

     需要地の首都圏では18年度から19年度にかけて手持ち工事の施工がピークを迎える。大手各社は他支店からの応援も含め施工体制の確保を進める中で、働き方改革への対応も並行して取り組む必要があり、社を挙げた総力戦の様相を呈している。企業としての成長には手持ち工事の着実な消化が大前提だけに、どのように働き方改革と関連付けるか。まさに生産性向上こそが、成長のかぎを握る。

     

     懸念するのは、主戦場である国内マーケットの変化だ。現行の中期経営計画は好業績を支える安定した国内建設事業環境を前提に数値目標を設定している。競争激化の受注環境が到来しても成長できる企業体質への基盤をいかに形づくれるか。タイムリミットは潤沢な手持ち工事が残る19年度。大手ゼネコンは海外、開発、新領域と業容の拡大を進めながら、新たなビジネスモデルの構築を急ごうとしている。

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    掲載日: 2018年6月18日 | presented by 建設通信新聞

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