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技術裏表・人命と財産守る壊れないEXP・J/パラキャップ社
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>無から有を創り出す--。1968年に世界初の全方向追従型エキスパンションジョイント(EXP・J)を開発したパラキャップ社(三重県桑名市、後藤英夫社長)。以来、120種類以上のオリジナル商品を生みだし、これまでに取得した特許は441件に上る。地震や温度変化による伸縮、不同沈下など外力から建物を守るEXP・J。熊本地震ではEXP・Jを境に2つに割れたマンションの画像や映像がクローズアップされたが、後藤社長は、「EXP・Jが壊れて建物を守るというのは間違った定説だ。暮らしを守るために壊れて良いものは何一つない」と強調。知的想像力で安全・安心な社会の構築に貢献する。
◆伝統に裏打ちされた技術
桑名市に本社と工場を持つパラキャップ社。天正年間の刀匠をルーツに、明治期は鉄鋼鍛冶(かじ)、大正期には板金加工業を営み、後藤氏の代になって1963年からはSUS(ステンレス鋼)加工を主力とした。68年には「無から有を創り出すという原点」である3次元可動方式のEXP・Jの開発に世界で初めて成功。外壁では風雨からの雨漏りを完全にシャットアウトする“印籠方式”の継ぎ目を開発した。「創業以来、今日まで雨漏りによるクレームは全くない」という。伝統に裏打ちされた高い加工技術とともに、「寝ていてもアイデアが浮かんで目が覚める」という考案力が最高級の品質と革新的な製品を生み出す源泉だ。
78年6月に起きた宮城県沖地震では、気仙沼市役所に納入したパラEX-U(全方向連動ステンレス製エキスパンション・ジョイント)が損傷を受けずに継続使用できる優れた品質であることを実証。それまでのアルミ押し出し型材が主流だった風潮を一変させた。その後に制定された新耐震基準や95年の阪神・淡路大震災を受けた見直しなど、大地震が起こるたびに厳しくなる基準をクリアし、2013年には高層ビル対高層ビル用として世界初の最大移動値プラスマイナス1500mmを確保した超大型のEXP・Jを開発して納入。“人命尊重の物造り”の精神のもと、「施主に代わり、日本一、世界一安心できるものづくりという哲学」は少しも揺るがない。
また、イニシャルコストが高いという声には「単に規格を満たすものではなく、ユーザーの安全という最大の目標を達成するため」であり、良質な材料を最先端の技術と加工設備でつくりあげた高品質の製品を納めることで、「1度取り付けたら20年、30年間壊れない。建物のライフサイクルコストを考えると一番安全で耐久性があるものが、結果的には一番喜ばれる」と品質、安全性、メンテナンス性に絶対の自信を持つ。「目先の利益を考えた商売ではなく、施主本意の最高級の品質をこれからも提供していく」と、“世界一のものづくり”にまい進していく。
◆品質に納得/実験棟視察
本社がある桑名市では、約1万2000㎡の敷地に12棟の工場を備え、自社内一貫生産体制を敷く。「本質を理解してもらえる顧客をエンドレスに創造する」という基本コンセプトを具現化したのが、2年前に完成した最新の第17工場(P17実験棟)だ。10m級の高さを誇る外壁を始め、内外壁や天井、床、エレベーターシャフト周りなどの豊富なラインアップを組み合わせた試験体がところ狭しと並ぶ。免震・制振構造の普及に伴い同社のEXP・Jもさまざまな建物に採用されているが、後藤社長の「建築はプライベートなもの」との方針で、施工事例集は作成しないが、「施主や設計者からの要望で成り立っている会社として、まず知ってもらうことが大事だ」と、建築家の視察は積極的に受け入れている。1000回を超える稼働実験など徹底した品質管理に加えて、「真心を込めて事を為す」という会社の原点を社員一同が実践しており、行き届いた対応や品質に満足し、納得して帰途につくという。
製作の現場では、入社以来40年を超える職人の手作業がものづくりの現場を支えている。製造部門を統括する中川孝司総合推進部部長は、「加工する機械の性能は向上しているが、熟練技術者はそれを超えて0.2mmの精度を生み出す。最後は人の手によるところが大きい」と語る。
後藤社長のイメージを中川部長が図面に起こし、それを各部門の技術者が具現化していく。熟練の職人の手でつくられたEXP・Jは、摩擦を極力低減させることで、動きの滑らかさや静穏性を追求。さらにメンテナンスフリーで長期間の耐久性を誇る。特に安全性については、「建物だけではなくユーザーの安全を確保するため、細部にまでこだわったつくり」になっている。会社設立から42年を迎えたが、後藤社長は「100年企業として発展すべく、今後も究極を目指していきたい」と、生産技術の熟練と世界一の考案力に磨きを掛けていく。
残り50%掲載日: 2018年6月27日 | presented by 建設通信新聞