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クローズアップ フェニックス・シーガイア・リゾート リニューアル計画/日建設計CM
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>リゾート法第1号施設として1994年に宮崎市に開業した『フェニックス・シーガイア・リゾート』。開業以来、最大規模となるリニューアルプロジェクトを支えたのが日建設計コンストラクション・マネジメントだ。豊富な経験と技術力、幅広い視点からCM(コンストラクション・マネジメント)業務の範囲を拡張し、経営から管理までの総合マネジメントサービスを提供。“選択と集中”により経営資源と体験価値の向上を実現させた同社の古川伸也取締役とマネジメントグループの堤栄三氏、川窪千壽氏に話を聞いた。 セガサミーホールディングスが所有し、フェニックスリゾートが運営するフェニックス・シーガイア・リゾートは、約237haの敷地に大小20以上の施設があり、総延べ床面積は35万㎡を超える国内最大級のリゾート施設。CMとして携わった期間は2012年8月から5年以上に及ぶ。事業開始時点で施設の多くが竣工後20年前後であった。古川氏は、「設備の修繕投資はマストな時期。地域に愛され、継続的に運営するためには資産価値と体験価値の向上が至上命題だった」と語る。
今回のプロジェクトでは、一般的なCMの業務範囲の枠を越えて建物のライフサイクルマネジメント全般にわたる幅広いサービスを提供した。上流では現状・事業性の検証、経営戦略に携わり、下流では修繕更新・建物管理計画までを担った。「業務領域が全方位に拡大し、CMよりもPMに近い感覚で取り組み、結果的にワンストップでサポートできた」(古川氏)という。
保有施設の調査・評価と多角度からの分析を経て、経営の判断材料を“見える化”して提示。初期から関わることで「経営者と同じ感覚で複数のプロジェクトを同時に組み立てることができた」(川窪氏)と語る。開業時に世界最大の屋内プールとして話題を呼んだ『オーシャンドーム』など経営の負担だった休止施設も複数あり、「全ての施設を残すことは必ずしも得策ではない」(堤氏)と指摘。解体したオーシャンドームも「施主や地元の意向を踏まえ、考えられることをすべて洗い出し、用途転用を含めた複数案を検証した」(川窪氏)と苦渋の決断だったことをうかがわせる。
リニューアルに際しては「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート」やコンベンションセンターの大規模改修・修繕やゴルフコースのナイター化、エントランス外構など収益性が高い部分に投資を集中させ、その他のホテルやホールなど用途が重なるものは解体。クラブハウスやテニスアカデミーなどは修繕による維持保全を図った。
総計画数は18件、関係者は200人以上、合計16回の見積もり合わせに延べ110社以上が参加した。「コストメリットを加味して最適解を見つけることがCMの役割」(古川氏)と、発注形態は一括が7件、コストオンは4件、分離発注が5件と多岐にわたる。
「繁忙期はホテル全室を稼働させたい」という施主からの要望を実現するため、改修工事は客室を先行。共用部は別発注とした。またホテル屋外プール改修は夏休みに間に合わせることを最優先としスケジュールを立案。「必要であれば建築確認申請を2度行うなど工期的にも実現可能な提案を心掛けた」(川窪氏)と、計画ごとの優先順位に応じて、オーダーメイドな組み立てを実践。地元企業への積極的な発注も「近い将来、お客さまとして戻ってきてほしい」(堤氏)というリレーションシップ・マーケティングの考えによるものだ。
プロジェクトのコントロールタワーとしてチームをけん引した同社だが、施主と請負者、施主の中でも経営者と運営者の間に立ち、それぞれの思いをくみ、誠実に応えた結果、「揺るぎない信頼を得ることができた」(川窪氏)と語る。気遣いとタイムリーな調整、マネジメント力を発揮し、「別発注でも仲間意識が高い現場」(古川氏)が醸成され、「ホテルを利用するお客さまを第一に考えられる関係づくりができた」(川窪氏)と振り返る。
施工側の発案で、外周全面の枠組足場から移動昇降式に変更することで、客室からの眺望を確保。内部の20m角の仮囲いをリボンで包みプレゼントボックスに見立てた演出はブライダル利用者に喜ばれた。分離発注で業務量は膨らんだが、「一人ひとりと直接対話することで、品質管理やコスト、工期のコントロールなどのメリットは大きかった」(堤氏)と利点を強調。「欧米のような契約社会化が進んだことで、現場も縦割りになっている。かゆい所に手を伸ばし、すき間を埋めることが、CMに求められる役割でもある」(古川氏)という。
古川氏は「日本も海外のようにホテルで豊かな滞在時間を過ごすスタイルが定着しつつある」と、利用者の意識の変化を指摘。それに加えて、「国内屈指の客室サイズを含め、もとから良い器があったからこそ、より価値を向上させることができた」と強調する。川窪氏も「この施設が誇りとなり、仕事へのモチベーションが上がったと言われたことがうれしかった」という。
そこでしか味わえない体験価値をそろえたリゾート施設へのリニューアルを契機に、スタッフがその魅力を再確認し、体験価値を創造する自主的な取り組みを進めて『シーガイアの少し変わった100のこと』として打ち出した。シェラトン・グランデ・オーシャン・リゾートホテルは全体の96%に当たる客室を一新。専用ラウンジの「シェラトンクラブ」や大人を愉しむ水辺のリビング「ザ・リビング・ガーデン」、多彩なポストカードで旅の思い出をしたためるための空間「レタールーム」、最上階の「天空ブライダル会場」、ライトアップした庭園を望む「KUROBAR」など、「適材適所に各室を再配置し、マテリアルの1つひとつにも議論を尽くした」(川窪氏)と、より上質な空間を演出。照明などナイター設備を備えた「ホシゾラ★ゴルフ」や客室から眺めるイルミネーションなど夜のコンテンツも充実させており、「写真で見たり、説明を聞くよりも、現地を訪れてさまざまな仕掛けを体験してほしい」(川窪氏)と語る。古川氏は「クライアントにわれわれの仕事を実際に体験してもらえる場所」と同社の代表作の1つに挙げる。最初の大規模な改修は終えたものの、「建物の一生を考えると先はまだまだ長い」と、施主の思いに応え、ライフサイクル全般をサポートしていく考えだ。
残り50%掲載日: 2018年8月1日 | presented by 建設通信新聞