地中埋設工事について解説。ケーブルの種類や埋没の深さは?
地中埋設工事は電線を地中に埋設する工事ですが、適切な工事のためには、正しい深さやケーブルの配線を行い、ケーブルを適切に保護することが大切です。今回は地中埋設工事の工事方法や必要なケーブルの種類、保護する方法について解説します。
地中埋設工事とは、地面の中に電気のケーブルを配線する工事です。電線を地中に埋めるため、電線が外に見えることなく見栄えがよくなります。
例えば住宅では、家の門灯に地中埋設工事で配線した電線を使うことが多いでしょう。大まかに「直接埋設式」「管路式」「暗きょ式」という3つの方法があります。また、環境や工事方法などによって使用できるケーブルが異なりますので、電気工事士を志す方は憶えておきましょう。
直接埋設式
直接埋設式とはVVF・VVRケーブルを使って配線する方法です。
ケーブルの保護としては、防護物を使ってカバーし、車両の影響を受けない場所では、板などを使って、ケーブルの上部を覆って保護します。
この工事方法のメリットは以下の通りです。
・工事費が安く抑えられる
・工事期間が短い
・埋設ケーブルの熱放射がしやすい
これらのメリットがある反面、埋設ケーブルが傷つきやすいデメリットがあるため、傷がつく可能性が低い場所に限られます。
管路式
管路式とは、鉄やコンクリート、強化プラスチックなどの管を使って保護する方法です。ケーブルの本数が多い場合や、交通事情により掘削工事を繰り返すのが難しい場所で行います。
管を通しておけば、後からちょっとした増線や配線の撤去を簡単に行えます。ただし、埋設ケーブルの熱放射がしにくい点がデメリットです。
暗きょ式
暗きょ式とは、洞道(とうどう)や共同溝を作ってケーブルを通す方法です。この方法の場合、中の配線スペースに余裕があるため、ケーブルの数が非常に多い場合はケーブルの増設が頻繁に行われる場合に使われます。
電気だけではなく、水道、通信、ガスなどとセットで使うことも多いです。
地中埋設工事には、用途に応じて様々なケーブルが使われます。ここでは地中埋設工事ではどのようなケーブルが使われるのか、その種類や特徴について解説します。
VVFケーブル
VVF(Vinyl insulated Vinyl sheathed Flat-type cable)ケーブルは、形が平型(Flat-type)になっている600Vのビニル絶縁ケーブルです。ビニルの被膜の上にビニルシースを覆っており、単純な構造になっています。ねじれや動きに強く、扱いやすいため、価格を安くしたい場合に使われることが多いケーブルです。
このケーブルは低圧屋内配線で使われ、15Aまでの照明やコンセントの電源供給に使われています。
VVFケーブルは比較的簡単に入手でき、電材店だけではなく、ホームセンターでも購入可能です。耐久性については、適切な工事方法で施工すれば30年もつといわれていますが、適切でない場合、耐久性が大幅に短くなります。また紫外線に弱いため、外部に露出してしまうと耐久性が短くなるでしょう。
VVRケーブル
VVFケーブルが平型なのに対し、VVR(Vinyl insulated Vinyl sheathed Round-type cable)ケーブルは丸型(Round-type)になっていることが特徴です。基本的な構造はVVFケーブルと同じで、ビニル被膜の上にビニルシースで覆った作りになっています。
形が丸いケーブルのため、VVFケーブルと比較すると、径が大きな線があることが特徴です。
VVRケーブルはVVFケーブルよりも許容電流が多いため、幹線ケーブルとして使われていました。しかし、現在では、強度や許容電流が優れているCVケーブルが登場したため、VVFケーブルとほぼ同じ使われ方をしています。
EM-EEFケーブル
EM-EEF(Eco-Material PolyEthylene insulated PolyEthylene sheathed Flat-Type)ケーブルは、環境配慮型の材料を使ったVVFケーブルです。「600V耐熱性ポリエチレンシースケーブル」とも呼ばれています。
大まかなケーブルの作りはVVFケーブルと同じですが、絶縁体やシース(外側の皮)が塩化ビニルからポリエチレンに変更されています。その結果、耐熱性が向上し、焼却時の有害物質発生が抑えられている点が特長です。
環境面に配慮した現場で使われますが、VVFケーブルなどのケーブルと比べると配線が硬く、施工性では難があります。また、配線のコストがVVFケーブルの1.5倍ほどになり、コストが上がってしまう点もデメリットです。
CVケーブル
CVケーブルは、「架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(Crosslinked Polyethylene PVC)」の略称です。このケーブルは幹線ケーブルとして普及しています。
現在、CVケーブルは最も信頼性が高いケーブルで、住宅や業務施設、商業施設や工場など、ほぼ全ての建築物や仕様に対して採用できるケーブルです。軽量で扱いやすさもあり、長期使用もできます。
番外編:使用できないケーブルは?
地中埋設工事では絶縁電線は使えません。使用できない電線の具体例としてはOW線(Outdoor Weatherproof《屋外用ビニル絶縁電線》)、IV線(Indoor PVC《600V ビニル絶縁電線》)、DV線(Drop wire PVC《引込用ビニル絶縁電線》)などがあります。
絶縁電線とは、銅など電気を通すものに、絶縁性の被膜をしたものです。これらの配線は保護されていないため、地中埋設工事で使うことはできません。絶縁配線の場合、配管を敷設してから配線します。
地中埋設工事でのケーブルを埋設する深さは、道路の真下など重量のある車が通る道では1.2m、そうではない場所では0.6mの深さに埋設します。
また、FEP管(Flexible Electric Pipe《可とう性電線管》)を使っている場合は、地面から300mm深いところで埋設します。この場合、管の径が200mm以下である必要があります。
埋め戻しの時は、隙間なく入念に埋め戻すようにし、管が必要以上に曲がったりしないようできるだけまっすぐになる状態を意識してください。
ケーブルの保護方法にも違いが出るため、確認しておきましょう。
重量がある車が通る道の場合は、トラフと呼ばれるコンクリート製の樋でケーブルを覆います。車が通る心配がない場所であれば、樋や板を使って保護すれば十分に耐えられます。
また地中埋設用の防護管も販売されており、そのような管を使うこともあるでしょう。
一方、暗きょ式や管路式の場合はコンクリートなどで外側が覆われているため、埋設のための防護は必要ありません。
地中埋設工事では適切な深さや防護を施した上で、条件に合ったケーブルを使う必要があります。適切な保護をしていない場合、ケーブルの被膜の耐久性がすぐに失われてしまい、施工後のトラブルになる可能性があるため、正しい方法で施工することが大切です。
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