建設ディレクターとは?建設業を支える新たな職種の仕事内容を解説!
施工管理職の業務をサポートし、労働時間の改善や新規雇用のきっかけにと期待される新たな職種「建設ディレクター」をご存じでしょうか。今後の建設の現場において広がりを見せることが期待されるこの職種について解説します。
建設の現場、特に施工管理職を支える新たな職種として注目されている「建設ディレクター®」をご存じでしょうか。
現在はまだ建設技術職として認識されていない建設ディレクターですが、労働時間の改善や雇用のきっかけとなる新たな働き方として、今後の建設の現場において広がりを見せることが期待されます。
この記事ではそんな建設ディレクターについて、その概要や導入のメリットなどを詳しくご紹介していきます。
建設ディレクターとは、ITスキルやコミュニケーションスキルを活用してバックオフィスから建設の現場をサポートする、新たに創出された職域です。
建設の現場で作業をする技術者は、現場での仕事だけでなく書類の作成など事務的な業務も行わなくてはなりません。
そういった技術者の仕事を支援し、現場とバックオフィスとの架け橋になることで、技術者が現場に集中できるような環境をつくることが建設ディレクターの役割です。
「建設ディレクター」という職種は2017年に、建設業向け教育やIT導入支援を行っている京都サンダー株式会社を母体として設立された「一般社団法人 建設ディレクター協会」が創出したものであり、同協会によって育成事業が行われています。
では、建設ディレクターはどのようにして生まれたのでしょうか。
その背景も見ていきましょう。
導入の背景
「建設技術者」と聞くと、現場での仕事やモノづくりをイメージする方が多いのではないでしょうか。
もちろん、例えば施工管理職であれば現場での施工・安全の管理などをメインの役割としています。
しかし実際には施工に際しての資料やスケジュール・品質などを管理するためのそれぞれの計画書、コストの計算、発注書・請求書の作成、報告書の提出など、非常に多くの事務作業が発生しており、全業務の60%を事務作業が占めると言われているほどです。
そのため昼間現場の仕事が終わってから事務所に帰り事務作業を片付けるといったことが常態化し、慢性的な長時間労働の原因となっていました。
そういった現状を改善するため、デジタル化によるサポートにより技術者の書類仕事などを引き受ける職域として生まれたのが建設ディレクターです。
建設業界では、「2024年問題」と呼ばれる労働環境問題が課題となっています。
時間外労働の上限規制などを核とする改正労働基準法が2019年に施行された際、建設業など一部の業種には5年間の猶予が与えられていたのですが、その猶予期間が2024年3月末で終了することとなっており、適用までに高齢化や人手不足による長時間労働などの労働環境を改善しなければなりません。
建設ディレクターは、この2024年問題の解決に際しても注目を集めており、今後より多くの企業や現場で導入が期待されます。
建設ディレクターの業務は、大別して
- 書類作成
- ICT業務
の2つに分けられます。
それぞれどんな業務か、詳しくご紹介していきます。
書類作成
建設工事には、まず見積もりを立てるところから実際の工事に入るための書類、施工中の資料、計画書、各種手続き用の書類など、多くの書類作成業務があります。
技術者が担う書類には専門的な知識や経験からの判断が必要なものももちろんありますが、中には安全書類の作成や写真の管理、台帳の作成など、知識を学んだ建設ディレクターであれば任せられるものも多くあります。
そういった書類作成の業務を担い、技術者の負担を軽減するのが建設ディレクターの重要な業務となります。
ICT業務
2つ目が、ICT業務です。
ICT(Information and Communication Technology)は情報通信技術と訳され、IT技術により人々やコンピュータをつなぐことを指しています。
建設業界においてもICTを活用し業務を効率化する動きが広がっており、タブレット端末による図面作成や現場とバックオフィスの情報共有、さらには3D技術を用いた設計など様々な取り組みが始められています。
例えば時間と人員を割いていた測量をドローンにより撮影・3D化することで1人で完結できるようにするなど、ITスキルを学び、こういったICT業務を担うという建設ディレクターも多くいます。
新たな建設職として認められつつある建設ディレクターですが、その存在は今後建設業界に様々な効果をもたらすと期待されています。
建設ディレクターを導入することは企業、また建設業界にとって、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
働き方改革が実現できる
まずは前述のように、働き方改革を実現するためのきっかけとなるということです。
特に書類仕事が多く残業時間が多くなってしまいがちな施工管理職にとっては、その労働環境改善に大きく貢献できるでしょう。
施工管理職はその仕事量の多さや長時間労働が多いという性質から、なり手が不足していることも問題となっています。
そんな施工管理職にとっては、建設ディレクターの存在が普及することで労働環境が改善でき、なり手を増やしたり、人材の育成に時間を割いたりと言ったことが可能になり、強い味方となり得るのではないでしょうか。
多様な働き方が実現できる
(一社)建設ディレクター協会によると、建設ディレクター育成講座参加者の約7割が女性だと言われています。
建設ディレクターはICTの活用によりリモートワークでの働き方も可能であり、建設業界に興味を持っていても「飛び込みにくい」「ライフスタイルの変化などにより働きにくい」と感じていた女性の雇用も創出できるなど、多様な働き方を実現することができます。
働き方や人材の多様化が実現できれば、人手不足の解消にも大きな効果があるでしょう。
若者の新規雇用のきっかけとなる
建設ディレクターはITスキルを活用できる業務であり、多様な働き方を可能とすることからこれまで建設業界になじみのなかった若者の雇用のきっかけにもなっており、現在建設ディレクターとして働く人の65%が10代~30代の若手だと言われています。
技術者の高齢化が叫ばれる建設業界にとってはうれしい効果だと言えるでしょう。
建設ディレクターは、現場の技術者のサポートとして業務経験を積むことができるため、その後のキャリアパスも豊富です。
プロフェッショナルとして経験と知識が必要なあらゆる書類作成業務を担う建設ディレクターはもちろん、ITスキルをさらに高めICTの分野からより現場に貢献する人、また施工管理職へ挑戦する人など、知識や経験を得ることでより専門的な業務を担うこともできます。
「建築ディレクター」として認定を受けるには、一般社団法人 建設ディレクター協会が実施している「建築ディレクター育成講座」の受講と修了テストの合格が必要です。
まず全8回、計48時間の育成講座で建設ディレクターとしての業務に必要な建設に関する基礎知識を学びます。ここでは施工管理についてや積算、各種工事書類について、またITの活用法などを学ぶことができます。
その後、修了テストに合格した受講者に認定証が発行されます。
育成講座の受講には厚生労働省の人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」が利用できることもあるため、建設ディレクターを導入したいという企業は人材育成に利用するのも良いかもしれません。
また、2024年3月現在、育成講座・認定は既に建設会社に勤めている人・採用が決まっている人や建設ディレクターの導入を進める企業を対象としています。
未経験者が個人で受講することはできないため注意が必要です。
今回は2024年問題への効果をはじめ、建設業界に今後大きく貢献が期待される新たな職種、「建設ディレクター」に関してその概要や導入のメリットなどをご紹介しました。
建設ディレクターはまだ建設技術職として広く認知されていませんが、長時間労働が問題となっている施工管理職にとって非常に恩恵が大きく、注目の高まる職種です。
導入企業が増えれば、労働環境が改善に向かうことが期待できます。
現時点で長時間労働や仕事量の多さに悩んでいるという施工管理職の方は、転職して環境を変えるという方法もあります。
仕事のキツさに悩んでいる施工管理職の方は、建設転職ナビの「無料転職支援サービス」にて、ぜひお気軽にご相談ください。
「建設ディレクター®」は、一般社団法人建設ディレクター協会の登録商標です。
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