計装士の仕事とは? 業務内容・資格などを詳しく解説
計装制御機器を扱うプロフェッショナルで、さまざまな建物の工事にかかわる「計装士」は民間の資格で、統括団体の名から「AJII」と略されることもあります。
計装制御機器の配管や配線工事についてその設計から取り付け工事、工事中の監理までを取りまとめ、建設業で幅広く活躍できる計装士の仕事内容や資格取得のメリットなど解説していきます。
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「計装」とは、プラントや工場の設備、高層・中低層ビル等の設備に関する管理を中心に、効率化と省力化のための設備運営を意味しています。
建設完了後、竣工後のビルや建物の運営がスムーズにいくように、計装制御機器の品質や安全の確保と、省エネルギー化、省資源化を取りまとめる役割を担っているのが「計装士」です。
防犯などのセキュリティ対策だけでなく、災害等の警告などを含む監視装置における計画や装備も「計装士」の仕事になります。
「計装士」は、国家資格に準ずる資格になりますが、社団法人日本計装工業会(AJII)の施行する公的資格で「1級計装士」「2級計装士」があります。
民間の資格とは異なり、国土交通省の制度を元に制定されている資格ですから、国または国が認める機関において試験、資格発行されるものです。
また、重要な点として、高度な技術と技術向上、計装における調査研究を中心に、社会貢献を目指すグループ団体として知られており、活躍していることにも注目できます。
計装士は、基本的に計測制御機器の取付工事や、それに関連する配線・配管工事の設計や監督を行います。具体的には、主に電気設計と計装制御設計に分けられ、電気設計は設備の動力としての電気を受電・変電し各設備に配電、電動機を運転するなど、機械設備を稼働させるための設計を行います。
計装制御設計は、設備を安定して運転させるために、操作・監視方式、自動化方針を設計します。制御システムの基本計画から詳細・設計工事まで行い、各種計測機器や端末の型式や仕様を決定します。
コンピューターやインターネットの普及から、最近の計装もシステムが変わりつつあります。
ですから、「計装士」の仕事や資格が制定され始めた1980年代よりも大きく変わっているでしょう。近年では、それぞれのプラントやビルの制御装置を中心に、経営情報システムまで取り扱っています。さらに、セキュリティ対策だけでなくコストダウンを図る企業が増えているので、企業のニーズに合わせて統合化されたシステムなども進んでいます。
計装事業は、プラントや工場を24時間保護するシールド的な役割を担っています。
24時間稼働するシステムを作り上げていくため、省電力、省エネルギー化も重要であり、安全性や生産性の向上が大きく関係している仕事です。
電気工事業や電気通信工事業、また設備に関しては管工事業や機械器具設置工事業の許可を受けて進められる工事なため、需要が大きく、建物が建設されていく以上必要な仕事です。各建設現場でも計装工事の需要が広がり、計装の資格を持つ人が求められています。そのため、計装エンジニアとしての仕事の場所は、建設会社や電気設備会社だけでなく、化学や医薬での活躍も進むでしょう。
また、近年ではPFI事業などの導入も増えているため、企業やプロジェクトなどの現場によっては、海外でのワークスタイルも標準化しています。
計装士としてのシステム作りやノウハウは、日本だけでなく海外での工場の建設でも活かされています。
※PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)…国や地方公共団体の事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を目指し、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法(内閣府HPより引用)
グローバルに働くチャンスもあり、機械設備や電気、システム回路などに関心のある方にとって、幅広く挑戦できる資格とポジションを確立するチャンスともいえます。
建設転職ナビで計装士の資格保有者を対象とした求人の平均想定年収はおよそ450万円~720万円となっています(2022年6月調べ)。
「計装士」としての資格は、取得までの経験や実務が関係しているため公的資格であっても簡単に受験できるわけではありません。そこで、各企業・各所属会社から「資格手当」が支給されることが多いようです。
資格手当の額は企業によってまちまちですが、中には数万円加算されることもあり、現場やプロジェクトによっては、出向手当なども検討する企業があります。
建物の設備運営には計装業界以外にも様々な業界が関わっていますが、そのなかでも計装士は365日24時間建物を守るという、責任感ある仕事を担います。
そんな計装士の資格が活かせる業界・職種にはどのようなものがあるのでしょうか?
近年は計装のシステムが変化しつつあるため、計装士が活躍できる場は今後さらに増えていくかと思いますが、現在計装士に人気がある業界・職種は「プラント業界」や「電気工事士」のようです。
プラント業界
工場や発電所、下水処理場などの業界一の大規模な建築プロジェクトに携わるのがプラント業界です。プラント(工場設備一式)は多種多様な機械、そして制御装置から成ります。プラントが稼働するためには全ての機械が安全かつスムーズに動かなくてはいけないため、計装士が活躍する業界なのです。
近年は海外展開している企業が増えてきていますので、計装士として世界を舞台に活躍することも可能です。
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電気工事士
計装士の資格を取得して計装制御機器の管理をしていくうち、もっと規模の大きい仕事に携わりたいと考えることもあるでしょう。そんな時には、少し角度を変えて電気工事士へとキャリアアップする方法も存在します。
電気工事士も計装士と同じように、住宅やビル、病院など様々な建築物の電気設備の安全を守り施工する仕事です。そういった作業は電気工事士だけしか出来ない事になっていますので、電気工事士と計装士両方の資格を保有していれば、現場で大活躍できることでしょう。
令和5年度 計装士の試験情報
【令和5年度の申込受付は終了しています】
主管
資格区分
公的資格(国土交通省)
受験資格
【1級計装士の受験資格】
計装工事の設計・施工の実務経験年数5年以上
※2級計装士合格者については、実務経験年数4年6ヶ月以上
※指導監督的実務経験年数1年以上を含む
【2級計装士の受験資格】
計装工事の設計・施工の実務経験年数2年以上
申込日程
令和5年5月1日(月)~5月19日(金)(消印有効)
※【学科試験より受験・実地試験のみ受験共】
試験日程
試験の種類 | 試験日 | 合格発表日 |
---|---|---|
1級計装士(学科試験) | 令和5年8月26日(土) | 令和5年9月22日(金) |
2級計装士(学科試験) | 令和5年8月27日(日) | 令和5年9月22日(金) |
1級計装士(実地試験) | 令和5年12月9日(土) | 令和5年2月16日(金) |
2級計装士(実地試験) | 令和5年12月10日(日) | 令和5年2月16日(金) |
受験手数料(消費税10%含む)
学科試験(1級・2級計装士):7,530円(受験手数料6,846円+税684円)
学術試験(1級・2級計装士):17,820円(受験手数料16,200円+税1,620円)
試験内容
■学科A(主に技術)
「1級計装士」:計装一般、機器、計装設計、工事の積算、検査と調整
「2級計装士」:計装一般、機器、計装設計、検査と調整
■学科B(主に建築法規)
「1級/2級計装士」:工事施工法、安全衛生、法規など
■実地試験
「1級/2級計装士」:工事計画、材料・製品の判定、計装設計、計装工事設計、制御ロジック、検査調整、安全衛生、計装工事材料積算、計装工事工数積算
難易度・合格率
試験実施年度によって合格率に差は出ますが、「1級・2級計装士」共に合格率は65%前後となっています。
受験するためには実務経験が必要になり、実務の中で必要な知識が多く出題されることが、合格率が高い要因です。
とはいえ、50%以上の方が合格できる試験であるため、難易度はそれほど高くありません。
なお、学科試験のほうが実地試験と比較して、合格率が10%程度低い傾向にあります。
学科試験に合格できれば資格を取得できる可能性が高くなるので、学科試験の対策に力を入れるようにしましょう。
合格基準は、1級・2級ともに学科試験が「正解率55%」以上、実地試験が「正解率60%」以上です。
過去問
計装士の試験の過去問を勉強するなら、一般社団法人日本計装工業会が発行している「計装技術講習会テキスト」がおすすめです。
一般社団法人日本計装工業会は、計装士の資格を取得したい方向けに「計装士技術維持講習」や「計装技術講習会」を開催しており、その講習者に対して、「計装技術講習会テキスト」を配布しています。
テキストの内容は、以下です。
・計装技術講習会1級テキスト[学科](2021年版):学科試験問題演習及び2020年度学科試験問題と解答例
・計装技術講習会1級テキスト[実地](2021年版):2020・2019・2018・その他年の4年分実地試験問題と模範解答例
・計装技術講習会2級テキスト[学科](2021年版):学科試験問題演習及び2020年度学科試験問題と解答例
・計装技術講習会2級テキスト[実地](2021年版):2020・2019・2018・その他年の4年分実地試験問題と模範解答例
上記のテキストを利用することで、過去問を使って勉強ができます。
なお、このテキストは講習会に参加していなくても、一般社団法人日本計装工業会のホームページから購入することも可能です。
価格は1級・2級ともに、学科テキストが「3,300円(税込)」、実地テキストが「4,400円(税込)」になります。
計装士の概要と、資格取得のメリット、給料、仕事の内容、試験の難易度と合格率についてお伝えしました。
オフィスビルから大規模プラントまで、各種機器を安全に稼働させるために不可欠な計装機器の専門家である計装士の資格は、今までの経験を活かし、更に活躍するために必要不可欠な資格と言えます。
資格を取得することで、周囲からの信頼が増し、転職や昇格にもとても有利になりますので、計装制御機器・電気設備に携わる仕事を行っている方は、特にチャレンジしたい資格ですね。
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