工事担任者資格は難易度が高い?種類別に紹介します
公衆回線やCATVなどの配線接続工事に関する国家資格「工事担任者」。
分かりにくい工事担任者資格の概要や難易度、取得するメリットなどを種類別にご紹介します。
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あまり聞きなれない資格かもしれませんが、「工事担任者」は公衆回線やCATVなどの配線接続工事に関する国家資格です。
よく「工事担当者」と誤解されますが、「工事担任者」が正式名称ですので間違えないようにしてください。
この資格は資格者証が非常に細かく分かれており、「(一財)日本データ通信協会 電気通信国家試験センター 」によると、下記のように分かれています。
第一級アナログ通信(※令和3年3月31日まで「AI第一種」)
アナログ伝送路設備(アナログ信号を入出力とする電気通信回線設備をいう。以下同じ)に端末設備等を接続するための工事及び総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事
第二級アナログ通信 (※令和3年3月31日まで「AI第三種」)
アナログ伝送路設備に端末設備を接続するための工事(端末設備に収容される電気通信回線の数が、1のものに限る)及び総合デジタル通信用設備に端末設備を接続するための工事(総合デジタル通信回線の数が基本インターフェースで1のものに限る)
第一級デジタル通信(※令和3年3月31日まで「DD第一種」)
デジタル伝送路設備(デジタル信号を入出力とする電気通信回線設備をいう。以下同じ)に端末設備等を接続するための工事。ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事を除く。
第二級デジタル通信(※令和3年3月31日まで「DD第三種」)
デジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(接続点におけるデジタル信号の入出力速度が毎秒一ギガビット以下であって、主としてインターネットに接続するための回線に係るものに限る)ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事を除く。
総合通信(※令和3年3月31日まで「AI・DD総合種」)
アナログ伝送路設備又はデジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事。
令和3年4月1日より資格の名称が変更され、また「AI第二種」と「DD第二種」が廃止されました。ただし、AI第二種及びDD第二種の工事担任者試験は、経過措置として令和3年4月1日から3年が経過する日までを限度として実施される予定です。
AI第二種 (※令和3年3月31日をもって廃止)
アナログ伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(端末設備等に収容される電気通信回線の数が、50以下であって内線の数が200以下のものに限る)及び総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事(総合デジタル通信回線の数が毎秒64キロビット換算で50以下のものに限る)
DD第二種(※令和3年3月31日をもって廃止)
デジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(接続点におけるデジタル信号の入出力速度が、毎秒100メガビット[主としてインターネットに接続するための回線にあっては、毎秒1ギガビット]以下のものに限る)ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事を除く。
改正前 | 改正後 |
---|---|
AI・DD総合種 | 総合通信 |
AI第一種 | 第一級アナログ通信 |
AI第二種 | 廃止 |
AI第三種 | 第二級アナログ通信 |
DD第一種 | 第一級デジタル通信 |
DD第二種 | 廃止 |
DD第三種 | 第二級デジタル通信 |
※当記事では基本的に令和4年4月時点の情報を掲載していきます。
アナログ通信(旧:AI種)
令和3年度第1回のアナログ通信の合格率は下記のようになっています。
合格率 | |||
---|---|---|---|
第一級アナログ通信 (旧:AI第一種) |
第二級アナログ通信 (旧:AI第三種) |
AI第二種 | |
3科目受験者 | 7.1% | 17.5% | 7.5% |
2科目受験者 | 36.8% | 24.5% | 22.2% |
1科目受験者 | 74.8% | 79.3% | 66.7% |
全体 | 38.7% | 42.5% | 26.4% |
出典:(一財)日本データ通信協会 電気通信国家試験センターHP より引用
第一級では3科目受験者の合格率が「7.1%」と非常に低くなっています。しかし第二級でも3科目受験者の合格率が「17.5%」なので、第二級でも3科目受験の場合の難易度は非常に高いといえます。
デジタル通信(旧:DD種)
こちらも同様に令和3年度第1回のデータを参考に解説していきます。
合格率 | |||
---|---|---|---|
第一級デジタル通信 (旧:DD第一種) |
第二級デジタル通信 (旧:DD第三種) |
DD第二種 | |
3科目受験者 | 13.2% | 43.1% | 12.2% |
2科目受験者 | 22.7% | 40.0% | 22.2% |
1科目受験者 | 70.4% | 82.6% | 57.1% |
全体 | 27.5% | 50.0% | 26.6% |
出典:(一財)日本データ通信協会 電気通信国家試験センターHP より引用
こちらはアナログ通信と少し違い、第二種の方が第一級より全体的な合格率が低くなっています。ただしこれはDD第二種のみ受験者数が明らかに低いことが関係しています。
DD第二種だけが第一級デジタル通信、第二級デジタル通信に比べて一桁人数が少ないため、合格率も低くなっている可能性があります。
総合通信(旧:AI・DD総合種)
同様に令和3年度第1回は下記のようになっています。
合格率 | |||
---|---|---|---|
3科目受験者 | 16.9% | ||
2科目受験者 | 26.2% | ||
1科目受験者 | 74.0% | ||
全体 | 30.9% |
出典:(一財)日本データ通信協会 電気通信国家試験センターHP より引用
総合通信(旧:AI・DD総合種)はAIとDDの両方出題される分、難易度も高く、合格率も低くなっていましたが、令和3年度第一回試験では過去最高の合格率となっています。
アナログ通信(旧:AI種)
第一級(旧:第一種):電話機等、ボタン電話装置、PBX、ISDNの端末機器
第二級(旧:第三種):電話機等、ISDNの端末機器
「アナログ通信」は基本的にアナログ設備の試験問題が出題されます。アナログ設備というのは一般的な電話機などです。
第一級の方が2科目多くなっていますので追加の勉強が必要となります。その為、第一級を受験するには第二級で必要とされる知識も取得する必要があります。
デジタル通信(旧:DD種)
アナログ通信(旧:AI種)と同様に、デジタル通信も第一級(旧:第一種)と第二級(旧:第三種)では出題範囲が異なります。
例えば第一級だと「IPボタン電話装置・IP-PBX」が追加されていますので、第二級に比べるとさらに広い範囲の知識が必要とされます。
総合通信(旧:AI・DD総合種)
総合通信は工事担任者としてすべての工事を担当できるので、非常に便利な資格です。もちろんその分出題範囲も非常に広く、基本的には「第一級アナログ通信+第一級デジタル通信」と考えてよいのですが、「技術」のみ若干出題範囲が広くなっています。
全体的な合格率も最も低いものとなっていますので、勉強には長い期間が必要となります。
電気通信サービスは、インターネットが発達し情報通信網が多く整備されて急速に変化・発達しています。情報通信インフラ技術に強い工事担任者は、そのような時代背景も相まって活躍が期待される資格となります。
技術力の証明になる
試験に合格していることにより、まず自分が工事担任者としての技術力があることを証明できます。証明できるということは社内での評価も上がります。また、技術があるということはそれだけでお客様からの信頼を得ることもできます。
昇進、転職の際にアピールできる
工事担任者は難易度の高い資格ですし、今後電気通信工事がなくなることはまずありえないでしょう。結果として工事担任者の社会的なニーズも今後高まっていきます。
会社としてはそのような人材は何としてでも確保したいので社内で「自分はこんな技能を持っている」とアピールすることができます。
また、転職の際も同様に自分のスキルをアピールすることができるので、有利に転職できます。特に通信インフラ関係であれば工事担任者の資格を取得している人は貴重な人材ですので、求人も多く有利な条件で転職できるでしょう。
情報通信エンジニアの受験資格を得ることができる
「情報通信エンジニア」は別名「エキスパート工事担任者」と呼ばれており、情報通信において自己の向上のために努力義務をはたしている技術者であることを、お客様や社会に証明できる資格です。
工事担任者資格や電気通信主任技術者資格、無線従事者資格のいずれかを取得している人のみが受験できます(下表)。ただし工事担任者資格で受験する場合「アナログ通信」は対象外となり、「デジタル通信」もしくは「総合通信」の資格を取得した人だけが受験することができます。
設定する資格 | 受験資格として必要な国家資格 |
---|---|
情報通信エンジニア (ビジネス) |
・工事担任者(総合通信、第一級デジタル通信、第二級デジタル通信、第一級アナログ通信、第二級アナログ通信、AI・DD総合種、DD第一種・第二種・第三種、AI第一種・第二種・第三種、アナログ・デジタル総合種、デジタル第一種・第二種・第三種、アナログ第一種・第二種・第三種) ・電気通信主任技術者 ・無線従事者(アマチュア無線の免許者は除く) |
情報通信エンジニア (ホーム) |
令和5年12月に廃止 |
出典:(一財)日本データ通信協会 HP より引用
情報通信エンジニアは大規模工事等に従事する「ビジネス」と「ホーム」に分かれていましたが、ホームについては令和5年12月に廃止されています。
情報通信エンジニアの資格を取得するには、工事担任者の合格直後に申請して書類審査、もしくは工事担任者資格者証が交付されてから10カ月以上経過すると認定研修が受講できるようになり、この研修を受講することで資格取得できます。
自らの技術・知識が最新のものであることを証明するものですので、工事担任者の資格の取得後は、積極的に情報通信エンジニア資格の取得をおすすめします。
工事担任者は「基礎」「技術」「法規」の3科目の試験となりますが、科目免除制度を利用することができます。
実務経験や認定学校修了などによる科目免除もありますが、以下では「科目合格」と「所持資格による試験科目の免除」について詳しく説明していきます。
科目合格
例えば第二級デジタル通信(旧:DD第三種)の基礎のみ合格したとすると、第二級アナログ通信(旧:AI第三種)と第二級デジタル通信の基礎の受験を3年間免除されます。しかし、DD第二種の基礎のみ合格したとすると、DD第二種を含むすべての資格の基礎が3年間免除されます。
これが技術と法規になると上位の資格で合格すると、下位の同じ種類の資格(アナログならアナログ、デジタルならデジタル)の受験が免除されますが、違う種類だと免除されません。
そのため、「自分がアナログなのかデジタルなのか?」よく検討して受験することが必要です。また、この制度を利用すれば毎年1科目合格すればよいので勉強も楽になります。
ただし、受験に落ちると最悪の場合科目免除の資格をはく奪されて、再度受験する必要があるので科目合格に頼るのも問題です。
科目合格については非常に複雑な制度ですので、詳しくは「(一財) 日本データ通信協会 電気通信国家試験センター 」を参考にしてください。
所持資格による試験科目の免除
工事担任者は一部の資格を所持することにより、試験種別や試験科目の免除を申請することができます。適用される資格は、工事担任者資格はもちろん電気主任技術者や無線従事者が含まれます。
例えば電気主任技術者の資格を所持していると、「総合通信(旧:AI・DD総合種)」の基礎と法規の受験が免除されます。他にも基礎のみが免除される資格などがあります。
また、令和3年4月より電気通信工事施工管理技士(2級の第一次検定に必要な試験にのみ合格した者を除く)が科目免除資格に追加されます。
この辺りも非常に複雑となっていますので、詳しくは「(一財) 日本データ通信協会 電気通信国家試験センターHP 」を参考にしてください。
工事担任者試験は電気工事士とは違い実務はありませんので、基本的には問題集や過去問で勉強していくことが中心となります。ただし、未経験だと初見ではほとんどが解けないと思われます。
重要なのは自分が得意な科目と不得意な科目をはっきりさせることです。得意な科目ばかり伸ばそうとせずに、いかに不得意な科目を攻略していくかが重要となります。
第二級デジタル通信と第二級アナログ通信(旧:DD第三種/AI第三種)は、速い人であれば3カ月程度の勉強で合格できるようです。しかし、経験が浅いもしくは全くない場合は半年程度の勉強期間を確保したほうが良いでしょう。
CBT方式による通年実施となった第二級以外の工事担任者試験は年に2度行われていますので、半年の勉強期間であればちょうどよい期間勉強することができます。また、勉強が苦手であれば実務経験による免除を目指すのも一つの手です。
主管
資格区分
国家資格(総務省)
試験申し込み(第一級および総合通信)
試験の申し込みは原則インターネットからのみとなります。
申し込み期間は、以下の通りです。
第一回 | 第二回 | |
---|---|---|
申請受付期間 | 令和6年2月1日(木)~2月21日(水) | 令和6年8月1日(木)~8月21日(水) |
試験手数料 払込期限 |
試験申請後3日以内 | 試験申請後3日以内 |
令和3年9月より「第二級アナログ通信」「第二級デジタル通信」の試験はCBT方式に変更となり、通年で実施されるように変更となりました。詳細は(一財)日本データ通信協会 電気通信国家試験センターHP をご覧ください。
令和6年の試験実施日と合否発表
試験は毎年2回行われます。
第一回 | 第二回 | |
---|---|---|
試験日 | 令和6年5月19日(日) | 令和6年11月24日(日) |
合否発表 | 令和6年6月10日(月) | 令和6年12月16日(月) |
受験手数料(消費税非課税)
8,700円 (1試験種別当たり)
試験内容と過去問(令和5年度)
【第一級デジタル通信】
3科目から合計15問、回答数72が出題されています。
設問数 | 回答数 | |
---|---|---|
電気通信技術の基礎 | 5 | 22 |
端末設備の接続のための技術及び理論 | 5 | 25 |
端末設備の接続に関する法規 | 5 | 25 |
例えば、令和5年度 第2回試験問題の「電気通信技術の基礎」からは以下のようなものが出題されています。
【第5問(3)】
次の文章の( )に、解答群から最も適したものを選びその番号を記せ。
デジタル中継伝送における伝送品質の劣化要因について述べた次の二つの記述は、( )。
A.再生中継器を用いたデジタル中継伝送においては、再生中継器の信号受信部におけるタイミング抽出回路から出力されるタイミングパルスの位相変動によりジッタが発生することがある。
B.符号間干渉は、一般に、デジタル信号の伝送に必要とされる帯域が十分に確保されていない場合などに発生し、ビット誤りが発生する要因の一つとなる。
【解答群】
① Aのみ正しい
② Bのみ正しい
③ AもBも正しい
④ AもBも正しくない
【解答】
③
【第一級アナログ通信】
3科目から合計15問、解答数72が出題されています。
設問数 | 回答数 | |
---|---|---|
電気通信技術の基礎 | 5 | 22 |
端末設備の接続のための技術及び理論 | 5 | 25 |
端末設備の接続に関する法規 | 5 | 25 |
例えば、令和5年度 第2回試験問題の「電気通信技術の基礎」からは以下のようなものが出題されています。
【第5問(5)】
次の文章の( )に、解答群から最も適したものを選びその番号を記せ。
マルチモード光ファイバにおいては、光パルスが光ファイバ中を伝搬する間に、その波形に時間的な広がりが生ずる。この事象は主に( )に起因して発生し、信号波形を劣化させる支配的要因となる。
【解答群】
① 構造分散
② 材料分散
③ ブリルアン散乱
④ モード分散
⑤ ラマン散乱
【解答】
④
【第二級デジタル通信】
3科目から合計13問、解答数62が出題されています。
設問数 | 解答数 | |
---|---|---|
電気通信技術の基礎 | 5 | 22 |
端末設備の接続のための技術及び理論 | 4 | 20 |
端末設備の接続に関する法規 | 4 | 20 |
例えば、令和5年度 第2回試験問題の「電気通信技術の基礎」からは以下のようなものが出題されています。
【第5問(1)】
次の文章の( )に、解答群から最も適したものを選びその番号を記せ。
デジタル信号の変調において、PSKは、デジタルパルス信号の1と0に対応して正弦搬送波の( )を変化させる変調方式である。
【解答群】
① 位相
② 周波数
③ 振幅
【解答】
①
【第二級アナログ通信】
3科目から合計13問、解答数62が出題されています。
設問数 | 解答数 | |
---|---|---|
電気通信技術の基礎 | 5 | 22 |
端末設備の接続のための技術及び理論 | 4 | 20 |
端末設備の接続に関する法規 | 4 | 20 |
例えば、令和5年度 第2回試験問題の「電気通信技術の基礎」からは以下のようなものが出題されています。
【第5問(2)】
次の文章の( )に、解答群から最も適したものを選びその番号を記せ。
4キロヘルツ帯域幅の音声信号を8キロヘルツで標本化し、1標本当たり7ビットで符号化すれば、( )キロビット/秒で伝送できる。
【解答群】
① 32
② 56
③ 64
【解答】
②
【総合通信】
3科目から合計20問、解答数97が出題されています。
設問数 | 解答数 | |
---|---|---|
電気通信技術の基礎 | 5 | 22 |
端末設備の接続のための技術及び理論 | 10 | 50 |
端末設備の接続に関する法規 | 5 | 25 |
例えば、令和5年度 第2回試験問題の「電気通信技術の基礎」からは以下のようなものが出題されています。
【第5問(1)】
次の文章の( )に、解答群から最も適したものを選びその番号を記せ。
デジタル変調方式の一つであるBPSKは、1シンボル当たり( )の情報を伝送できる方式である。
【解答群】
① 1バイト
② 2バイト
③ 1ビット
④ 2ビット
⑤ 4ビット
【解答】
③
Q: 工事担任者の合格率はどのくらい?
A: 種類や科目によって大きく異なります。令和3年度第1回のアナログ通信では第一級(7.1%)でも3科目受験者の合格率が非常に低く、第二級(17.5%)でも難易度が高いことがわかります。デジタル通信ではDD第二種(12.2%)が他の科目に比べて受験者数が少なく、合格率も低くなっています。総合通信(30.9%)は過去最高の合格率となっています。
Q: 工事担任者に合格するための勉強方法は?
A: 勉強には問題集や過去問を使用し、不得意な科目を重点的に攻略することが重要です。第二級デジタル通信やアナログ通信は、早ければ3カ月程度、経験が浅い場合は半年程度の勉強期間が必要です。勉強が苦手な場合は実務経験による免除を狙う方法もあります。
さまざまな種類がある工事担任者資格は、今後ますます需要が高くなることが予想されます。
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