土木設計とは? 業務内容・資格などを詳しく解説
縁の下の力持ちでありながら、ときに人々を魅了する、人々の生活の利便性や安全性を守る土木設計。いまいちピンと来ない人にも既に興味ある人にも、土木設計の仕事内容をわかりやすく解説していきます。
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建設業のうち建築と対をなす分野である土木。土木というと華々しい建築に比較すると少し地味なイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかし最近では、合理的な構造美や夜景の美しさで有名な東京ゲートブリッジ(下写真)、映画で一躍有名になった黒部ダム、実は日本人技師が存続に貢献したアメリカ大陸を繋ぐパナマ運河など、有名な工作物に伴って人気度がひそかに上がっている分野でもあります。
縁の下の力持ちでありながら、ときに人々を魅了する、人々の生活の利便性や安全性を守る土木設計。いまいちピンと来ない人にも既に興味ある人にも、土木設計の仕事内容をわかりやすく解説していきます。
ライトアップされた東京ゲートブリッジ
(設計:セントラルコンサルタント株式会社 / パシフィックコンサルタンツ株式会社)
土木とは建設業のうち道路、トンネル、ダム、橋、河川、運河などの分野を指します。建築との違いは何?と思われる方がいるかと思いますが、簡単に言うと「地面の下が土木、地面の上が建築」と考えるとわかりやすいかもしれません。
土木と聞くとガテン系のイメージを持たれるかもしれませんが、学問として土木工学の分野が確立しており人々の安全を確保するため日々研究されています。建築学とは近縁でありながら分類されているため、分業されることが多いです。しかし最近では建築家が橋をデザインしたり、建築と土木が一体的に計画されたりするように、分野の横断により、より良いものを作ろうと言う動きがあります。
土木設計は大きく分けて「概略設計」と「詳細設計」の二つに別れています。
概略設計とは?
例えば道路を設計する際、まず道路のルート、カーブ、材料を決定していきます。橋であればまず形状や架構、構造、材料などを決定していきます。この最初の設計が概略設計です。計画全体の大枠を決めるスキームであり、経験や技術力によって、予期せぬものを予測し備える能力が必要になります。
詳細設計とは?
詳細設計は概略設計によって決められた大枠に従って、工作物そのものが成立するように詳細を詰めていきます。ミリ単位で設計するのはもちろんですが、建築などと異なり、道路やトンネルではカーブなどを決定する曲率も重要であり、工事できる図面にまで仕上げるための設計です。
将来性がある
土木設計は、トンネルやダム、橋などのインフラ建造物の設計に関わる仕事です。当然、インフラは社会にとって必要不可欠な存在であるため、仕事がなくなることはありません。
また、老朽化が進んでいるインフラ建造物も多く、建造物の更新や補修も増えていくことが予想されるため、土木設計の需要は高まる一方です。
転職の選択肢が多い
土木設計の就職先は、建設会社だけではなく、土木に関する研究機関やコンサルティング会社、官公庁など転職の選択肢が多いメリットがあります。
さまざまな会社で土木設計ができる人を必要としているので、転職しやすく将来性のある仕事です。
スケールの大きい仕事ができる
土木設計は、ダムや道路などインフラ建造物を設計する仕事です。インフラ建造物は大規模ものが多いため、自分が設計したものが地図にわかりやすく残ります。また、インフラ建造物はライフラインを支えているため、長い期間修復しながら使用されるので、後世まで残る可能性も高い建造物です。
他の職業ではなかなか味わえない、後世まで残るスケールの大きい仕事に携われることが、土木設計のやりがいと言えます。
人々の生活を支える仕事ができる
土木設計は、人々の生活を支えるインフラの設計を行う仕事です。例えば、堤防は大雨によって河川の氾濫を防ぐために必要な建造物です。また、道路は車で移動するために必要なインフラで、私たちの生活を支えてくれています。
このように、インフラ建造物を設計する土木設計は、私たちの生活に大きな貢献をしてくれている仕事であるため、やりがいを感じられるでしょう。
スケジュール管理が得意
土木設計は、スケジュール管理が得意な人に向いています。土木設計は長期間のプロジェクトですが、各フェーズの締め切りが明確に決まっているためです。
公共工事の場合、期限を過ぎてしまうと予算が通らないケースもあるため、徹底したスケジュール管理が必要になります。普段から締め切りから逆算して行動できる人におすすめの仕事です。
問題解決能力が高い
土木設計は、問題解決能力が高い人に向いています。実際の現場では、状況やクライアントの要望によって、スケジュールや予算などに問題が出てくるケースもあり、場合によっては設計を変更する事態に発展するケースもあるため、状況に合わせて柔軟に設計を変更するなどの、問題解決能力が必要不可欠です。
土木設計は少し地味? 2000年にできた「土木遺産」とは
「土木遺産」という言葉はご存知でしょうか。芸術の側面も持つ建築とは少し異なり、土木設計は少し地味と考えられているかもしれません。その用途と発注方式などからスクラップアンドビルドが繰り返されてきた歴史は否定できないものです。
2000年に公益社団法人土木学会によって創設された「土木遺産」は、保存すべきと評価された工作物に与えられる顕彰です。美しさを讃えられる橋、日本の経済成長の一端を担った道路、洪水などの水害の恐怖から救った河川など、評価は様々です。
人々の土木への関心の高まり、土木工作物の再評価、設計者のモチベーション向上に繋がったりと、土木設計を行う人や志す人にとっては追い風となっています。
厳密に言うと一級建築士とは異なり、土木設計において業務独占資格のような無くてはならない資格はありません。とは言え公共事業の仕事が多い性質上、 技術士などの専門資格を持つことで受注に繋げることが必要になります。
国家資格で「 土木施工管理技士」がありますが、こちらは設計というよりも現場における施工管理者が所持する資格です。しかしながら土木施工管理技士取得の過程で得る知識も多いのと、現場をよく理解していると良い設計をできることが多いため取得して損はないです。
民間資格にはなりますが平成21年に「土木設計技士」という資格が生まれました。まだまだ知る人ぞ知る資格ですが、知名度は着実に上がっています。土木設計を目指すものにとっては知識や技術を示せる資格です。
土木工学を学べる学科はその名の通り、土木工学科です。工学、理工学系に属する学部で、土木における幅広い知識が学べます。土木設計の大手企業などはこれらの学科や大学院卒業を条件としている企業も多いです。土木の中でも色々な分野があるように、大学の研究室もそれぞれの分野に特化しています。在学時に幅広く学び、自分にあった分野を見つけることが良いでしょう。
人々の生活を支える土木工作物、そのスケールと人の役に立てるやりがいは土木設計ならではです。美しい構造美、生活の利便性が格段に上がる、災害から身を守るなど多くの人々に寄り添った設計ができる魅力があります。まさに地図に残る仕事と言えるでしょう。
構想から設計、施工まで実に多くの時間を費やします。しかしその反面、人々の生活の一部になった瞬間の感動とは大きいものです。土木遺産などの制度ができ、それを巡る人々も増え、ますます関心が高まっている土木設計、日本を作る、世界を作るやりがいの大きな仕事です。
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