設備設計一級建築士とは?受験資格や合格率、難易度を紹介
設備設計一級建築士は設備設計のスペシャリストとして位置づけられる一級建築士の上位資格ですが、取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか?試験内容や難易度、年収まで徹底解説します。
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設備設計一級建築士は、一級建築士よりさらに上位の資格です。取得するだけでも一級建築士として5年以上の設備設計にかかわる経験を持ち、そこから講習会の受講、試験をして合格をすることが必要です。
試験の難易度も非常に高く、資格を保有していると設備設計に関しての実務経験及び知識を保有していることの証明となります。
この資格自体は2006年12月の建築士法改正によりできた資格なので、歴史としてはそれほど深くありません。しかし、設備設計に従事する建築士にとっては取っておいて損はない資格です。
設備設計とは
建築物の設計は、大きく分けると3つに分けることができます。
意匠設計( 詳しくはこちら)
外観のデザインや内部の間取りをどうするかなど、建物自体の形や内部空間の設計。
構造設計( 詳しくはこちら)
柱や梁、鉄筋の本数など建物の構造の強度の設計。
地震や台風などによる強度の設計や、ボーリングデータからの基礎の設計なども含まれる
設備設計
トイレの給排水、エアコンの空調や換気量、電気関係の設備などの設計。
上記から分かる通り、設備設計とは、建物を快適に使用できるように、設備の設計を行うことです。
設備設計一級建築士が新設された理由
設備設計一級建築士の資格は2006年にできた比較的新しい資格ですが、この資格が新設されたのは、この前年である2005年に建築業界で耐震偽装問題が起きていたことが原因となっています。
この耐震偽装問題は、建物の設計と業界の慣習に関してある根本的な問題を含んでいました。
昔は建物の設計は基本的に意匠設計事務所が下請けに構造設計や設備設計を丸投げすることが多くありました。そのため、構造設計者が意匠設計事務所からの圧力により、偽装に手を出すことになってしまいました。
建築物は人々が快適に生活するのに欠かせないものですが、大きな設計ミスは建築物を使用する人々の命にかかわります。特に耐震偽装であれば、耐えるべき震度の地震にも耐えられない可能性があり、非常に危険です。
そこで耐震偽装問題を機に「専門性の高い分野は専門の人が設計を行うべき」という考えのもと、「設備設計一級建築士」の資格が新設されたのです。
設備設計一級建築士は、現在約6,000人が修了していますが、このうち約2,700人は設備設計一級建築士の資格創設時(2008年)に取得登録されたものなので、若手の有資格者は特に貴重といえます。
また、工事管理、施工管理のプロフェッショナルとして企業からも高く評価されるため、設備設計一級建築士の資格を取得することで、資格手当が付いたり、昇進・昇格の条件となることも見込めます。
設備設計一級建築士は、建築工事の中でも特に設備設計に特化した建築士の呼称で、「3階建て以上かつ5,000㎡を超える建築物」の設備設計には設備設計一級建築士が必要です。
そんな設備設計一級建築士は、ゼネコンや設備設計事務所で特に活躍します。
ゼネコン
ゼネコンで主に担当するのは、主にビルやマンション、橋などの建造物です。規模の大きい建造物は不特定多数の人が来訪することを用途に建てられるため、安心や安全性が求められます。
また、「3階建て以上かつ5,000㎡を超える建築物」の設備設計には、設備設計一級建築士が自ら設計を行うか、設備設計一級建築士が設備関係規定に基づいて適合性の確認をとることが義務付けられています。そのため、ゼネコンにおける設備設計一級建築士の活躍には期待できます。
さらにゼネコンの場合、工事や建物の金額を積算する仕事の方など、いろいろなジャンルの仕事に関わる人たちがひとつの会社に完結しているため、コミュニケーション次第では最新の技術などに関しても取り入れやすい場所となります。
設備設計事務所
設備設計事務所は、設備設計に特化したスペシャリスト集団です。施工部署がないため、他社設計と共同で設計を進めることになります。基本設計や構造の段階から関われるため、自信の設計提案を実現させたいという人に向いています。
また、設備設計事務所であれば、設備設計のスペシャリストである設備設計一級建築士の高度な専門知識や能力が発揮させやすいため、設計以外の設備のノウハウを吸収しつつ活躍することも期待できます。
設備設計一級建築士の年収
設備設計一級建築士の年収は400万~800万ほどと言われています。
設備設計一級建築士のみに絞った公的統計はありませんが、参考までに厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2019年) 」によると、一級建築士の平均年収は702.9万円(男性718.1万円、女性607.5万円)となっています。
設備設計一級建築士の資格が必要となる建物というのは、一定規模以上の建築物(階数3以上かつ5,000㎡超の建築物)です。基本的に設備設計一級建築士に適合性の確認を行うだけでよいので、自社に存在しなくても下請けで行うことが可能です。
そのため、もともとの収入が高い大手ゼネコンや、官公庁を相手に仕事ができるコンサルタントなどは大きな収入が期待できます。それ以外は年収がやや低くなる場合がありますが、設備設計一級建築士は企業内でも優遇されることは確実でしょう。
設備設計のスペシャリストかつ、一級建築士の上位資格でもある設備設計一級建築士ともなれば、関われる業務はさまざまです。
たとえば、設計がメインの業務であれば、基本設計や構想の段階から関わることができます。
ゼネコンでの業務であれば、マンションやビルなど、建造物の施工全体の管理とコントロールを行えるため、東京スカイツリーや国立競技場、関西空港など、社会貢献度の高いものを担当することも期待できます。
主管
資格区分
国家資格(国土交通大臣認定)
受付期間
令和4年度より、受講申込みは、原則として「インターネットによる受付」のみとなります。
【申込受付】
令和5年6月12日(月)午前10時~6月30日(金)午後4時
講習の構成および日程
講習は、3日間の講義と1日の修了考査の構成により実施します。
日程 | |
---|---|
講義 | 講習地により日程が異なりますので、 詳細はこちらをご確認下さい。 |
修了考査 | 令和5年11月19日(日) |
修了発表 | 令和6年1月26日(金)(予定) |
受講資格
「一級建築士」として5年以上設備設計の業務に従事した方が対象です。
業務経験として認められる業務は以下の通りです。
設備設計の業務
確認審査等の業務(建築設備に関するものに限る)
建築設備士※2として従事する、建築設備に関する業務※1
確認審査等の補助業務(建築設備に関するものに限る)
工事監理の業務(建築設備に関するものに限る)
消防同意の審査に関する業務(建築設備に関するものに限る)
※1 一級建築士となる前に行った業務を含む
※2 「一級建築士」として登録し、かつ、「建築設備士」の資格も有し所定の業務経験を有する場合、講義及び修了考査のうち、「建築
設備に関する科目」が免除されます。
一級建築士は建築の実務経験がないと受験資格を得られないため、新卒でゼネコンなどに入社しても最長で10年近くは設備設計一級建築士の資格の受験資格を得ることはできません。
受講手数料(消費税込)
講習は、5種類の申込区分から該当する区分を申し込みます。
他に、ネット受付事務手数料が必要です。
申込区分 | 区分概要 | 受講手数料 | 令和4年度受講者 |
---|---|---|---|
I | 全科目受講 | 66,000円 | 60,500円 |
II | 法適合確認のみ受講 | 44,000円 | 38,500円 |
III | 設計製図のみ受講 | 55,000円 | 49,500円 |
IV | 建築設備士資格者 | 44,000 円 | 38,500円 |
区分の詳細は(公財)建築技術教育普及センター をご確認ください。
講習・修了考査内容
申込区分により受講が免除される内容もあります。
※内容の後のカッコは受講標準時間を表します(1h=1時間)
日程 | 内容 | |
---|---|---|
講義 | 第1日 | 建築設備関係法令(1.5h) |
建築設備設計総論(0.5h) | 法適合確認(4.5h) | |
第2日 | 給排水衛生設備の設計技術 (2.5h) | |
空調・換気設備の設計技術 (4h) | ||
第3日 | 電気設備の設計技術 (3h) | |
設計事例・工事監理 (1h) | ||
輸送設備の設計技術 (2.5h) | ||
修了考査 | 11月19日(日) | 法適合確認(2h) |
設計製図(4h) |
出典:(公財)建築技術教育普及センターHP より引用
難易度・修了(合格)率
合計の修了率だけ見ると低くても40%なので、難関資格で知られる一級建築士(総合合格率9.9%、令和3年度)と比べると修了率は低くありません。また、全科目受講でも修了率は低かった時で30%なので、こちらも同様に修了率の数字そのものはそれほど低くないように思えます。
しかし、忘れないでほしいのは設備設計一級建築士の受験資格を得るまでが非常に難関だということです。受験の前提条件となっている一級建築士が上述したようにかなり高い難易度の資格で、その試験に合格した人が5年以上設備設計の実務をこなし、事前に勉強した上でこの修了率なのです。したがって、「修了率が高い=簡単な資格」というわけではない点に注意が必要です。
令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
実受講者数 | 修了率 (%) |
実受講者数 | 修了率 (%) |
実受講者数 | 修了率 (%) |
|
修了者数 | 修了者数 | 修了者数 | ||||
申込区分I (全科目受講) |
153 | 29.4 | 194 | 47.4 | 132 | 46.2 |
45 | 92 | 61 | ||||
申込区分II (法適合のみ確認) |
27 | 25.9 | 49 | 85.7 | 11 | 90.9 |
7 | 42 | 10 | ||||
申込区分III (設計製図のみ受講) |
15 | 66.7 | 10 | 60.0 | 24 | 75.0 |
10 | 6 | 18 | ||||
申込区分IV (建築設備士) |
146 | 57.5 | 151 | 80.8 | 121 | 87.6 |
84 | 122 | 106 | ||||
申込区分V (全科目免除) |
0 | ― | 0 | ― | 0 | ― |
0 | 0 | 0 | ||||
合計 | 341 | 42.8 | 404 | 64.9 | 288 | 67.7 |
146 | 262 | 195 |
出典:(公財)建築技術教育普及センターHP より引用
過去問
設備設計一級建築士の過去問は、前年度の修了考査問題集をコピーしたものを頒布しています。(公財)建築技術教育普及センターHP から郵送での申し込みで入手可能です。
設備設計一級建築士の資格を取得することは、ご自身のキャリアにとって大きなメリットになります。一級建築士を取得したら実務経験を積み、設備設計一級建築士の資格取得にチャレンジしてみてくださいね。
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