プラントとは何？その種類から工場との違いまで徹底解説

建設に携わる中で、また日ごろの生活の中で、「プラント」という言葉に触れたことはありませんか？

建設業界で働いていても、普段業務で関わらない場合はあまりイメージがわかず、工場との明確な違いなどが分かっていないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、プラントについてその概要を徹底解説していきます。

プラントとは？

「プラント」という言葉の意味の1つに、「生産設備」というものがあります。
建設業界でのプラントとはこの生産設備のことを指しています。

これだけ聞くと、工場と何が違うの？とお思いの方もいるかもしれません。
2つの明確な違いについてご説明します。

プラントと工場の違い

プラントは、大きく見ると工場の分類の中の1つです。

工場の中で、複数の設備を組み合わせて作られ、つながったいくつかの設備で生産を行っているものをプラント、またその設備や建物などプラントの工事に関わる業界をプラント業界と呼びます。
プラント、と聞くと大規模なものをイメージするかもしれませんが、確かに大規模なプラントは多いですがその規模はプラントの定義には関係ありません。

例えば自動車工場のようにライン上で部品を組み立てていくようなものは「工場」、原料の生産工場のような複数の設備が配管でつながれているものは「プラント」ということになります。

プラントの種類

前述したようにプラントに規模は関係なく、その設備により決められています。

複数の設備を持つプラントでは様々なものが生産されますが、生産している製品によって主に以下の4つの分野に分けることができます。

エネルギープラント

まずは、エネルギーをつくり出すプラントです。
つまり、発電所ということです。

化石燃料を原料とする火力発電所や原子力発電所をはじめ、水力、地熱などの様々な原料からエネルギーを生産するプラントです。
近年では太陽光や風力など、再生可能エネルギーのためのプラントが多くなっています。

化学プラント

化学反応により化学製品をつくり出す化学プラントは、大きく2つに分けられます。

産業プラント

生活に使われる化学製品や食品、医薬品、金属など、様々な生活製品を生産するプラントは産業プラントと呼ばれます。

エネルギープラントや化学プラントの一部を含めることも多いです。

環境プラント

下水処理や廃棄物の処理を行い、さらに再資源化を図るプラントが環境系に分類されます。
焼却・溶解炉や食品廃棄物の処理場、プラスチックの処理場などもこれです。

近年では、ごみなどの処理時に発生した熱を利用して発電するプラントも増えてきており、環境保全が世界的な課題となっている中でさらなる需要が期待されています。

プラント業界の特徴とやりがい

様々な種類があるプラントですが、その建設に関わるプラント業界にはプラント業界ならではの特徴や、やりがいがあります。

◯携わる作業員が多い

プラントの建設では、建物だけでなくタンクやポンプ、機器類など複数の設備の設置、配管なども行うこととなります。
そのため建設の規模が大きく、一般的な工場の建設よりも作業員の人数が多いのが特徴です。
　
関与する作業員の数が多いため、全員の安全管理やスケジュール管理がより大切になります。
つまり、施工管理技士の存在が重要になるということです。

◯高収入が期待できる

プラントは前述のとおり大規模なものが多いため、プラント業界に関わる業種は収入の面でも期待できるとされています。

特に責任のある立場となる施工管理者では、プラント以外の建設業に携わる施工管理技術者よりも高収入となるでしょう。

◯幅広い知識が得られる

プラントにはご紹介したような様々な種類があり、種類ごとに扱う設備も違うため、求められる知識や経験にも違いがあります。
いくつものプラント建設に携わることで、幅広い知識が得られるでしょう。

知識と経験を得られれば業務の上で自信がつき、キャリアアップにつなげることもできますね。

◯社会貢献度が高い

プラントでは、産業プラントのような生活の中で使用する製品を生産するプラントをはじめ、生活に不可欠なインフラとなるエネルギーをつくるプラントなど、どれも生活に密接に関わるものを生産する重要な役割を持っています。

建設に関わったプラントが人々の生活に貢献しているという実感が得やすく、社会貢献度を高く感じられることは大きなやりがいとなるでしょう。

プラント業界の業務内容

プラントは、設計から機器・材料の買い付け管理を経て、実際の建設が行われます。
これらはまとめて、「EPC事業」とも呼ばれています。

試運転により問題がなければ顧客に引き渡され、稼働が開始されますが、稼働後も管理やメンテナンス、修繕工事などを継続して行う必要があります。

プラントの建設・運用には様々な職種が関わります。
どんな、建設技術者がどのような役割を担っているか、また将来性の観点からも注目される職種を見ていきましょう。

プラント業界で活躍する職種

◆プラントエンジニア

プラントの設計・建設から保守管理に至るまでを統括するプラントエンジニアは、プラント業界の主となる職種です。
一部の工程のみを担当する場合など携わる企業によっても仕事の幅は異なりますが、例えば化学プラントの製品化プロセスの構築、プラント内の機器の設計製作など、プラントに関する多様な業務に携わります。

また、プラントエンジニアは1人ですべてを担うわけではなく、各工程で専門的なスキルを活かして様々な技術者が活躍しています。
次から紹介するような役割を担う人材も、プラント建設ではプラントエンジニアの1人として業務を行う場合があります。

プラントエンジニアについては、こちらの記事もご覧ください。

◆施工管理技士

多くの作業員がいるプラント建設では、施工管理技士が大きな役割を持ちます。
建築や配管、電気工事などそれぞれの施工の管理や、作業員の安全、スケジュールやコストなどのあらゆる管理を行います。

発注者との打ち合わせやトラブル対応も担うことがあります。

施工管理技士については、こちらの記事もご覧ください。

◆建築士・技術士

建築物であるプラントの基本的な設計を行う建築士や、各設備の詳細な設計を行う技術士もプラントの設計において活躍しています。

建築士については、こちらの記事もご覧ください。
技術士については、こちらの記事もご覧ください。

◆監理技術者（特に機械器具設置工事）

大規模な建築物であるプラントには、それぞれの目的に応じた多種多様な機械器具の設置が必須です。
そのため、施工の技術上の管理をつかさどる技術者である監理技術者、とりわけ機械器具設置工事の実務経験で認定を受けた方は活躍できるでしょう。

監理技術者については、こちらの記事もご覧ください。

プラント業界の現状と将来性

現在、国内では多くのプラントが建設されており、新たなプラント建設の需要は落ち着いています。
もちろん既存のプラントの修繕や建て直しの需要はまだありますが、今後のプラント建設市場の中心は海外、特に中東や東南アジアとなっていくことが考えられるでしょう。

また、環境保全やエネルギー問題への対処の面から、国内でも環境プラントや再生可能エネルギーを利用したエネルギープラントの需要は今後も高まりを見せることが考えられます。

今後プラント業界で注目される職種は？

様々な業界において広がりを見せるDX化やAI技術の利用は、プラントにおいても注目されています。

実際に2022年3月には横河電機株式会社とJSR株式会社の共同実験により、AIによる35日間の化学プラントの自動制御に成功したと発表されました。

今後も技術の発達によってプラントの建設・運用にAI分野の活用が進むことがおおいに考えられるため、AIシステムの開発が可能なエンジニアやAI知識のある設計士・技術者などの市場価値が高まっていくでしょう。

参考：【横河電機/JSR】世界初 AIによる自律制御で化学プラントを35日間連続制御／横河電機株式会社

プラント業界でおすすめの資格は？

プラント業界に携わる上で資格が必須なわけではありませんが、設計や施工管理など、新プラントの建設に1から携わり、経験を積むためには専門的なスキルが欠かせません。

プラント業界で有利になる資格としては、以下のようなものがあります。

まとめ

生活に欠かせない施設であるプラントには様々な種類があり、各プラントの建設・運営には多くの建設技術者が携わっています。

プラント建設は大規模なプロジェクトであり、人々の暮らしを支える大きなやりがいのある仕事です。
海外でのプラント需要の高まりから、海外での業務に興味がある方や語学スキルがある方にとってはチャンスも多くあるでしょう。

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