建設技術者が「転職」を考えたときに読むコラム 転職を考える建設技術者こそ注目すべき「建設スタートアップ企業」
業界にイノベーションをもたらそうとする「建設スタートアップ企業」をご存知でしょうか? 転職先の候補になかったとしても、実はあなたの転職に大きく関わっているのです。
「建設転職ナビに、建設スタートアップ企業の紹介記事? 建設技術者が転職先に選ぶわけがないスタートアップに、なぜ注目する必要が……?」と首をかしげる向きもあるでしょう。いえいえ、実はあなたの転職に大きく関わっているのです。
「スタートアップ企業」とは、これまでなかった新しい価値やサービスを提供するビジネスモデルを開発し、新たな市場を開拓するベンチャー企業を指します
【スタートアップ企業の3大ポイント】
- いままでにない価値やサービスを提供する
- 社会貢献性が高い
- 短期間で急成長する
そもそも「start up(スタートアップ)」は、「開始、始動、(コンピュータなどの)起動」などの意味がある言葉です。日本では「立ち上げ」「起業」などの意味合いで使われることもありますが、ただ単に創業したばかりの企業は該当しません。スタートアップ企業の概念において重要なのは、「イノベーションを起こすアイディアと技術をもっている」こと。つまり、常識をくつがえすような革新的なサービスをひらめき、それを実行できる人材を有した組織こそスタートアップ企業と呼ぶにふさわしいのです。
スタートアップ企業は、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家(創業間もない企業に対し株式や転換社債と引き換えに資金を供給する個人)、事業会社などから資金を調達し、短期間でのスケール(規模拡大)を目指します。最終的にはイグジット(出資者たちが利益を得ること)を求められます。具体的には市場への株式公開(IPO)や株式譲渡による事業売却(バイアウト)が挙げられます。そこに至るまでは非常にシビアな闘いです。卓越したビジョンと強いリーダーシップを持った起業家と、専門性を有する少数精鋭のメンバーだけが到達しうるゴールなのです。
ちなみに、スタートアップ企業は既存企業のように「与えられた役割をこなす」働き方ではなく、みずからがなにをすべきか主体的・能動的に考え「自分から仕事を創る」働き方が主流です。自主性が求められる環境でクリエイティブに働きたい、社会貢献したいと考えている若い人にとっては、とても魅力的な企業でしょうね。
ご存知のとおり、建設業界は「高齢化」「人材不足」「重労働」などの大きな問題を抱えています。
建設業は国家を支える重要な業界ですが、「3K」と呼ばれて久しい業界でもあります。したがって若者にも敬遠されがち……。高い専門性を必要とする業務も多いため、経験に乏しい人材には参入障壁が高いのも、人材不足に拍車をかけています。
そこで国土交通省は「i-Construction」を推進し、さまざまなカタチで支援をおこなってきました。それに呼応するように、大手ゼネコンをはじめとする建設会社が単独ではおこなえないイノベーションを、「建設スタートアップ企業」とタッグを組むことで解決しようとしているのです。
彼らはこれまで人間の手作業でおこなっていた業務を自動化したり、企業間のマッチングによって効率化を図るなど、あらゆる問題を解決しています。今後の建設業界の発展は、この建設スタートアップ企業抜きでは語れない、といっても過言ではありません。
建設スタートアップといっても、そのサービスはさまざま。3つの型に大別できます。
1 マッチングプラットフォーム型
2 マーケットプレイス型
3 プロジェクト管理型
ここで、建設技術者が注目すべき「建設スタートアップ」を5つ取り上げてみましょう。
株式会社 助太刀
「助太刀(すけだち)」は、建設業界に従事するすべての受注者・発注者を繋ぐマッチングアプリです。助太刀は、コネクションがないと仕事の獲得が難しかった業界の慣習を大きく変えました。
このサービスを運営している助太刀は、「古い慣習にとらわれている建設業を一新する」というミッションを掲げ、工事が完了したその日に工事代金の受け取りを申請できる「助太刀pay」や、仕事中の怪我を補償する傷害保険を付帯した「助太刀プリペイドカード」、さらには壊れた工具を修理する「助太刀ストア」などのサービスも提供しています。当社ヒューマンリソシアも、2020年 12月より助太刀との業務提携を開始しました。
建設転職ナビの姉妹サイト「建設の匠」では助太刀の我妻陽一CEOにインタビューをしていますので、こちらも合わせてお読みください。
シェルフィー株式会社
シェルフィーは「建設業界に健全な競争環境をつくり、利用者の納得感を生み出す」というビジョンを掲げ、IT分野を駆使して建設業界をシンプルにするサービスを提供中です。
主なサービスは、内装マッチングサービス「内装建築.com」と、 建設業界向け業務効率化サービス「Greenfile.work」。とくに「内装建築.com」では店舗内装の依頼を検討している施主側と、設計・施工会社をマッチングさせるB to B向けのサービスで、国内最大の規模を誇ります。
株式会社アンドパッド
現場効率化はもちろん、経営改善までも一元的に管理できる業界シェアナンバーワンの施工管理アプリ、それが「ANDPAD」(アンドパッド)です。現場写真や図面資料を集約できたり、工程表も共有できたり、建設職人と現場監督とのやりとりにはチャットが使えたり、さらには日報もアプリで作成できてしまうスグレモノ。
「幸せを築く人を、幸せに。」をビジョンに掲げて2014年4月設立されたアンドパッド(旧社名オクト)が提供しています。最近はCM展開もおこなうなど急成長中です。
テラドローン株式会社
テラドローンは、アジアやヨーロッパなどの世界25カ国以上に支社を構える、世界最大の産業用ドローンソリューション・プロバイダー。ドローンを用いて空撮・測量・点検・データ分析などをおこなっており、測量の新しい手法として利用されています。日本では大手ゼネコン・建設会社・測量会社・建機メーカーのオファーによるドローン測量実績は1200回以上だとか……!
株式会社ダンドリワークス
ダンドリワークスは、現場の様々な問題を解決するコミュニケーションツールを提供。前身がリフォーム会社なため、建築現場で生じる「悩み」をもとに、さまざまなサービスを開発しています。現場の生の声が反映された活用しやすいサービス「ダンドリワークス」は、今後の普及拡大に期待大です。
さて、ここで冒頭の疑問に戻ります。
「なぜ建設技術者の転職サイトで、該当求人が出ているわけでもない建設スタートアップ企業を取り上げるのか?」
実は建設スタートアップ企業の現況について理解することは、あなたが転職の際、重要な指標にもなるからです。
そもそも建設スタートアップ企業が存在するのは「建設業界に課題があり、それらを解決するため」。裏を返せば、課題を解決できなければ建設業界内の企業は事業を継続できないおそれがある。しかし単独では解決が難しい……。
そんな中、建設スタートアップ企業と連携し、彼らの技術を積極的に導入している会社は、単独では課題解決ができないことをいさぎよく認め、他者の手を借り、コストをかけてでも課題に立ち向かい、未来に向けて事業を継続させようとしていると言えるのではないでしょうか。
またプロジェクト管理型のシステムを導入しているということは、「社員の働き方をどれぐらい真剣に改善させようとしているのか」の判断指標にもなると思います。もちろん、新しもの好きの経営層が独断でシステムを導入したものの、社員にまったく見向きもされないで放置されているケースもあるでしょうが……。
「建設転職ナビ」会員登録後、あなたの担当となったキャリアアドバイザーに、興味がある企業について訊いてみてください。
「この会社では、たとえば〇〇業務を支援する建設スタートアップ企業の△△のようなサービスを導入していたりしますか?」「導入しているならどんなサービスを導入し、どれぐらい効果があったのか検証していますか?」と——。
「建設スタートアップ企業との連携? サービスの導入? そんなものは必要ない、導入の予定もない」と企業からにべもない返答が返ってくるようであれば、それは危機的状況でもやり方を変えようとしない旧態依然とした組織体質の証。仮に待遇面で納得したあなたが転職しても、いずれ非効率な業務の進め方や人材不足に苦しむことになるかもしれません。
建設スタートアップ企業に対する温度感は、その会社の将来性を計るリトマス試験紙。そういった視点で転職先選びをしてみてはいかがでしょうか。